(ブルームバーグ):トランプ米政権は12日、中国との新たな貿易摩擦の緩和に向けた取引にオープンな姿勢を示した。一方、中国政府が発表した最近の輸出規制については協議を進める上で大きな障害だと警告した。
バンス副大統領は米中で激化する貿易対立を巡り、「理性のある道を選ぶべきだ」と中国側に呼びかけ、摩擦が長引けばトランプ大統領の方が有利だとの認識を示した。
トランプ氏はその後、習近平国家主席に対して事態打開の余地を残す一方で、全面的な貿易戦争になれば中国が打撃を受けると暗に警告した。
「中国のことは心配いらない。全てうまくいく!尊敬される習主席は一時的に判断を誤っただけだ。彼は自国が不況に陥ることを望んでいないし、私も望んでいない。米国は中国を助けたいのであって、傷つけたいわけではない!!!」と、トランプ大統領が自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に投稿した。
トランプ、バンス両氏のコメントは、中国に最近の貿易措置を見直すよう圧力をかけつつ、報復の応酬による緊張激化は避けられると市場に安心感をもたらそうとしていることを示唆している。
繊細な駆け引き
「最近の政策動向は、過去数回にわたる米中の主要会談前に予想されていたよりも幅広い結果の可能性を示唆している」と、ゴールドマン・サックス・グループのエコノミスト、ヤン・ハッチウス、アンドリュー・ティルトン両氏らはリポートで指摘した。
「最もあり得るシナリオは、米中が最も強硬な措置を後退させ、協議の結果、5月に合意した関税エスカレーションの一時停止がさらに、場合によっては無期限に延長されるというものであるように見受けられる」と分析した。
株式や原油、暗号資産(仮想通貨)は10日、中国のレアアース輸出規制などへの報復を警告するトランプ大統領の投稿で大きく値下がりした。だが、トランプ氏の12日のコメントを受け、アジア時間13日午前に米先物は上昇した。
バンス副大統領はFOXニュースの番組「サンデー・モーニング・フューチャーズ」で、「繊細な駆け引きになる。多くは中国の対応次第だ」と発言。「中国が非常に攻撃的に出ても、米大統領の方がはるかに多くのカードを持っていることは間違いない。だが、彼らが理性的になる用意があるなら、米国もそうするだろう」と述べた。
中国商務省は12日、米国に対し高関税による脅しをやめ、未解決となっている貿易問題の解決に向けてさらに協議を進めるよう促した。
市場の落ち着き期待
この1週間で、中国が新たな輸出規制などの措置を発表したことで、米中の緊張は高まっていた。ただ、一部の措置は11月まで発効せず、広範に実施されない可能性もある。
トランプ大統領は10日、11月1日から中国製品に100%の追加関税を課すとともに、特定の米国製ソフトウエアの輸出も制限すると発表。航空機部品の出荷停止も示唆した。ただ、発効する来月1日まで交渉の余地も残している。
グリア米通商代表部(USTR)代表は、この期限が今週に市場の混乱が落ち着くと期待できる理由だと指摘した。
グリア氏は「市場がやや懸念を示すのは当然の受け止めだと思う」としながらも、「これらの措置はまだ講じられていない。11月1日の予定だ。このため、状況が安定すれば、市場が今週落ち着いてくると期待している」と述べた。
理性ある道
ゴールドマンのエコノミストらは中国による最近の措置について、米国からより大きな譲歩を引き出そうとする動きの可能性があると分析。一部の米関税が引き下げられるという「市場にとってポジティブな結果」につながることがあり得ると指摘する一方、米中が再び3桁台の関税を課すネガティブな結果となるリスクもあるとした。
バンス副大統領はトランプ氏と11、12両日に話したことを明かし、トランプ大統領が「習主席と築いた友情を大切にしている」と語った。その一方で、「われわれには多くのレバレッジがある。私自身も、大統領も、それを使わずに済むことを望んでいる」と語った。
また、中国が「自国が生産する一部産品へのアクセスを世界全体から遮断するような道を進むなら」この良好な関係も脅かされると述べた。
「今後数週間で、中国がわれわれとの貿易戦争を始めることを望んでいるのか、それとも理性的に対応するつもりなのかがよく分かるだろう。彼らが理性ある道を選ぶことを期待している」と、バンス氏は話した。
原題:Trump, Vance Open Door to China Deal as Trade Spat Drags On (2)(抜粋)
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