外交政策

  共和党が長年掲げてきた自由貿易支持の正統性を政権1期目に破壊したトランプ氏は関税導入を擁護するとともに、大統領に返り咲いた場合はこれをさらに推し進める考えを示した。

  トランプ氏は高率の輸入関税法を成立させたウィリアム・マッキンリー第25代大統領について、「マッキンリー氏は米国を豊かにした。彼は最も過小評価されている大統領だ」と指摘。トランプ氏の理解によれば、「関税王」マッキンリー氏の後任らはニューディールなど多くの支出を必要とする政府プログラムによってマッキンリー氏の遺産を食いつぶし、経済運営の重要な手段を阻害したという。

  トランプ氏は関税を導入すれば潜在的な敵対国も関税を撤廃するよう頼みに来るとし、交渉を有利に進められると説明。実に賢明な施策である関税に反対する人が多いのは信じられないと語った。

  バイデン大統領はトランプ氏が導入した対中関税を維持し、多くの業界団体や消費者団体を驚かせた。バイデン氏はさらに、鉄鋼やアルミニウム、半導体、電気自動車(EV)、バッテリーなどの関税を引き上げた。超党派の消費者擁護団体、米消費者選択センター(CCC)のヤエル・オソウスキー副ディレクターは5月に「これは全て選挙に向け『タフガイ』政治の名の下で行われたが、全面的な物価上昇をもたらすだろう」と述べた。

  しかし、トランプ氏の考えでは、バイデン氏の措置は中国が米国の経済と安全保障にもたらす脅威について自分が正しく認識し、民主党が間違っていたことの証明だということになる。そして欧州の同盟国などに対しても同様の措置を講じる構えだ。トランプ氏は諸外国の米国産品購入が不十分だとして、中国からの輸入品への60-100%の追加関税だけでなく、他の国からの輸入品にも一律10%の関税を課すと述べた。

  その上でトランプ氏は「われわれは不当な扱いを受けている。しかし私はその全てを、その文化を変えつつあった」と述べ、大統領に返り咲けば仕事をやり遂げる考えを示した。

台湾・サウジ

  外交政策に取引を絡めるトランプ氏の考えと、あらゆるディールに「勝ちたい」という願望は世界中に影響を及ぼす可能性があり、米国の同盟を損ねる恐れさえある。中国から台湾を防衛するという米国のコミットメントについてトランプ氏に尋ねたが、最近の台湾に対する超党派の支持にもかかわらず、中国が侵攻した場合に立ち向かうことに関してはせいぜい鈍い反応だった。

  同氏の懐疑的な態度の一部には、経済面の不満がある。「台湾はわれわれの半導体ビジネスを奪った」とし、「われわれはどれほど愚かなのか。彼らはわれわれの半導体ビジネスを全て奪った。彼らはとてつもない富を得ている」と発言。同氏が望んでいるのは台湾が米国に防衛代金を支払うことだ。「保険契約と何ら変わらないと思う。なぜわれわれはこうしたことをしているのか」と問いかけた。

  トランプ前大統領が懐疑的になる別の要因は、地球の反対側にある小さな島の防衛には現実的な難しさもあると考えている点だ。「台湾は9500マイル(1万5290キロ)も離れている。中国からは68マイル離れている」とトランプ氏は話す。台湾に対するコミットメントを放棄すれば、米外交政策の劇的な転換を意味することになるが、トランプ氏の発言はこうした関係の条件を根本的に変える用意があるように聞こえる。

  対照的に、サウジアラビアについてのトランプ氏の見解はより友好的だ。過去半年以内にムハンマド皇太子と話をしたと述べたが、そのやり取りの性格や頻度に関しては詳しい説明を控えた。

  米国の石油・ガス生産が増えた場合、エネルギーにおける優位性を維持したいサウジの動揺を招くことを心配しているかと尋ねられたトランプ氏は、そうは思わないと答え、個人的な関係を再度指摘した。ムハンマド皇太子について、「彼は私を好きだし、私も彼のことが好きだ」と言い、「彼らは常に保護を必要とするだろう。彼らは元来守られていない」とした上で、「私は常に彼らを守る」と語った。

  トランプ前大統領はバイデン大統領とオバマ元大統領がサウジとの関係を損ねたと非難し、サウジを主要な対抗者へと追いやったと主張。「彼らはもはやわれわれと共にない」とし、「彼らは中国と一緒にいる。しかし、彼らは中国と一緒になりたいわけではない。彼らはわれわれと共にありたいのだ」と述べた。

  トランプ氏にとって、サウジとの関係を緊密化したい理由は米外交政策にとどまらない。多額の金がかかっているのだ。7月1日、トランプ・オーガニゼーションとDARグローバルはジッダにトランプタワーと高級ホテルを建設する計画を発表。娘婿のジャレッド・クシュナー氏が設立した投資ファンドも、サウジ政府系ファンドから20億ドル相当の投資を得ている。