(ブルームバーグ): バイデン米大統領は5日、11月の大統領選での再選を断念するよう求める声を退けるとともに、トランプ前大統領との先月27日の討論会での低調なパフォーマンスが選挙戦に大きなダメージを与えたとの見方を否定した。バイデン氏が自身にとって最大の政治危機に誠実に取り組んでいないのではないかと懸念する民主党関係者もおり、こうした姿勢は不安をさらに増幅させるリスクがある。
バイデン氏はABCニュースとのインタビューで、大統領職をあと4年務めるスタミナはあるとしながらも、自らの認知能力に関して国民を安心させるため独立した検査を受けることを約束するまでには至らなかった。
バイデン氏は世論調査でトランプ前大統領に後れを取っているとは認めず、民主党幹部の間で身を引くよう求める話は直接聞いていないと説明。自身に選挙戦撤退を検討するよう促すことができるのは「全能の神」だけだと言明した。
米下院民主党トップ、異例の週末会合へ-バイデン氏選挙戦不安の中
バイデン大統領は先の討論会で精彩を欠いたパフォーマンスに付きまとったような大きな失言を回避したものの、トランプ氏に勝てないだけでなく、再選を果たしても、さらに4年は務められないのではないかという不安をこの1週間で抱いている有権者や献金者、民主党関係者もいる。プライムタイムで今回放送された22分間のインタビューによって、こうした懸念が和らぐ公算は小さい。
バイデン氏が示した姿勢は2期目を視野に挑戦を続ける決意を固めた候補者にとって、恐らく選択できる唯一の戦略だ。5日の演説では、自身の年齢を認めた上で、トランプ氏に対する攻撃を強めた。7日には激戦州ペンシルベニア州などでイベントに参加する計画をバイデン氏陣営は示した。
討論会後に公表された複数の世論調査は、トランプ氏に対してバイデン大統領の形勢が不利になりつつあることを示唆している。トランプ氏との差が6ポイント開いたとする調査もある。米紙ニューヨーク・タイムズとシエナ大学の世論調査によれば、74%の有権者がバイデン氏は大統領を務めるには高齢過ぎると回答した。
五分五分
しかし、バイデン氏は自分が後れを取っていないと信じているかと尋ねられ、「私が話をする世論調査の担当者は皆、トスアップ(五分五分)だと言っている」と答えた。
率直に話すとして匿名を条件に語ったある民主党の献金者は、バイデン大統領周辺の人々がバイデン氏に身を引くよう勧めないことに腹を立てていると言い、選挙運動の継続は妄想的で身勝手だとの見方を示す。
オバマ元大統領の上級顧問を務め、バイデン氏に批判的なアクセルロッド氏は今回のインタビュー後、「彼は人々の懸念に危険なほど無関心だ」とX(旧ツイッター)に投稿した。
バイデン氏はマーク・ウォーナー上院議員が他の議員を集めて選挙戦から撤退するよう圧力をかけようとしていることを認識しているとした上で、他からは選挙戦に残るべきだという意見も聞いていると述べた。
「マークと私は異なった見方を持っている」と、バイデン大統領はインタビューで述べた。
全能の神
「もし全能の神が降りてきて、『ジョー、選挙戦から撤退しなさい』と言われたら、私は選挙戦から退くだろう。全能の神は降りてきていない」と続けた。
バイデン氏は討論会での低調なパフォーマンスについて、ひどい風邪によって引き起こされた「一度きりの悪いエピソード」のせいだったと説明。「いかなる深刻な状態を示す兆候もない」と述べた。悪い夜を過ごしていることにいつ気付いたかと尋ねられたバイデン大統領は、トランプ氏が叫んだため、途中で気が散っていた局面があったことを示唆した。
「自分がコントロールできていないことに気付いた」と当時を振り返った。
民主党議員や献金者の懸念が高まる中、今後1週間で一連の問題が試されることになる。
バイデン大統領はペンシルベニア州を訪れた後、9日からワシントンで北大西洋条約機構(NATO)加盟国首脳を招いてサミットを開催する。大統領のスケジュールは、ホワイトハウスであと4年間務める能力があることを有権者に証明するため、さらなる努力を求めるパニックに陥った民主党内への回答となる。
原題:Biden’s Defiant Interview Unlikely to Calm Democratic Nerves(抜粋)
--取材協力:Stephanie Lai.
(バイデン大統領のインタビュー発言を追加し更新します)
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