認知機能検査がきっかけに

それから1か月。年の瀬を迎え、壽造さんは、年賀状作りに精を出していました。25歳のころに免許を取った壽造さんは、60年近く無事故無違反でした。去年の免許の更新時、75歳以上の人を対象に行われる認知機能検査の結果が思わしくなく、運転をやめました。

壽造さん
「あなたと今これだけ会話ができるけど、やっぱり運動神経はにぶっちょるし、やっぱ状況判断は悪い」

通院に買い物、妻や娘の支えで

返納後、病院には、妻・清子さんの運転する車で行っています。買い物は、近くに住む娘にも協力してもらっているといいます。清子さんが体調を崩したらすぐに病院に連れて行けないなど、返納には不安と葛藤がありましたが、妻や娘と話し合い、返納後の生活を支えてもらうことにしました。

壽造さん
「自動車の免許っていうのは、道をただ走るってだけじゃない。もし何かがあって交通事故ということを必ず考えないといけないでしょう。だから返納は考えざるをえん」

壽造さんの晩酌用の刺身を買うため、清子さんは、毎日、車で10分ほどの場所にあるスーパーに買い物に行きます。清子さんは、去年7月に足を骨折した影響で、車の乗り降りの段差が大変だといいますが、運転に心配はありません。

清子さん
「あ~これこれ、刺身」

公共交通を利用する場合、車の3倍の時間がかかるそうです。体力的にも、車を使ったほうが楽です。

記者
「車がないと買いに行くの大変ですよね?」
清子さん
「うん。私が免許やめたら、魚をぐるーっと売って歩く人がおってんよ。あれに頼もうかと思っちょる」

清子さんも、自身が返納した後の生活を少しずつ考え始めています。清子さんも免許取得後、50年無事故無違反。優秀なドライバーですが、みずからに決まりを作っています。運転は明るい時間帯だけ。市街地には車で出かけません。

清子さん
「もしもっちゅうときがあったら困るから。もしもがあっちゃいけないんです」

壽造さんは周囲の支えで、返納後の生活に支障はないといいます。

壽造さん
「うちの母ちゃんはそりゃ、存在は絶大。俺は120%助かっちょる」