1か月かけて、ようやくスタートライン

11月6日、本番28日前。この日からついに、全パートそろっての練習です。

顧問・田中睦さん
「いち、に、さん!ちょっと乗り遅れてる。フロ~!「フロ~!」がこうパーンと当たっていない」
「あんた今、乗り遅れたやろう?私はごまかせない」
「いきすぎ!いきすぎ!そんな高くなくていい」

ちょっとしたためらいが、歌のズレを招く。高音を臆することなく出す勇気も必要なんです。

顧問・田中睦さん
「でも、出るのはわかったやろう?出るよちゃんと。頑張れ。人間度胸だ」

それぞれに課題もあれば、想いも様々。

部員 みうさん
「こういう機会があったらもう、ぐいぐい。もともと、第九の存在を知っていたので、まさか本当に出られるとは思わなかったので、すごくうれしいです。コロナ禍の状態で、少ない人数で少ない声で歌うみたいな感じだったので」

そう、いまの高校生たちは、中学時代コロナ禍に直面した 世代。

顧問・田中睦さん
「中学校の活動が極端になくなってしまって、つまり歌っちゃいけない、授業でも歌っちゃいけない、歌いたくても歌えない。そんな中感じたのは、もどかしさではなく、歌える喜びでした」

部員 りなさん
「歌えることへの感謝というか、歌えることが当たり前じゃないなっていうのをすごく感じたなと思いますね」
顧問・田中睦さん
「コンクールの厳しさも楽しさも、あまり経験していないので、それに代わるものって言ったらおかしいんですけど、何かないかなって、どこかで思っていたと思うんですよ。そこに、第九が降ってわいた感じ。1番は歌うことを通じて人と繋がるっていうことをその喜びとか、そこでしか味わえないものを経験してほしいなって
思っていたので、最低限、迷わずに歌えるっていうところまでは持っていってあげたいなって思います」

11月18日、本番2週間前。その思いが、この日あふれました。

顧問・田中睦さん
「誰も気にかけないじゃん、発声のとき、周りを。自分たちが、声をどういうふうに作っていきたいか、どんな声を出したいか、全体がどんな響になってほしいのか
黙っていて思っているだけでは何も伝わらないちゃんとアクションを起こしてください」

部員 みうさん
「第九を歌うときって、自分のことで必死になるんですよね。お腹しっかりしなきゃとか。そしたら、自然と周りの声が聞こえなくなってしまうことが私の場合は多くて」
部員 しおりさん
「一人ひとりが自分のことで精いっぱいだから、周りと合わせるということの余裕がなくて。まだ、合唱というよりかは、独唱同士が一緒に歌っているだけみたい」

歌うことで精いっぱい-
歌でつながるためには、それだけでは足りません。

本番まで2週間。昼休みにも集まって声を重ねました。

スタッフ
「本番までに仕上がりそう?」
部員 はなさん
「気持ちで・・・」
部員 ももかさん、まきこさん、みうさん、はなさん
「仕上がる・・・仕上げる!仕上げる!」
部長 まきこさん
「団結力が強い。仲がいいから。いい意味で、合唱バカしかいない。合唱が大好きで大好きで集まってきた人たちなのでそこが通じ合えている感じがします」

歌が好き。だから、なんとかなる!