2020年11月、富山市のホテルで、当時25歳だった知人女性に性的暴行を加え、けがを負わせたとして、当時23歳だった元大学生の男性が強制性交等致傷罪に問われた裁判。一審で無罪判決を受けた男性の控訴審で、23日、被告人質問が行われました。男性は「女性が抵抗しなかったことや行為に協力的な様子を見せていた」と改めて無罪を主張。当時の状況については「一審のときほど記憶が鮮明ではなく、今ははっきり覚えていない」と述べました。一方で被害を受けたと主張する女性は書面で「被告が普通の生活を送っているなら許されない」と主張。裁判には、一審の無罪判決に抗議するために発足した市民団体も傍聴に訪れました。裁判の詳報です。
起訴状によりますと、男性は当時23歳だった2020年11月21日、富山市内にあるホテルの客室のベッドで、県内の当時25歳の女性に対し、覆いかぶさるなどの暴行を加えて性交し、およそ1週間のけがを負わせたとされています。男性は2021年3月に強制性交等致傷の疑いで逮捕され、その後起訴されていました。

一審の争点は女性の証言の信用性。富山地裁は、2022年5月の判決で、懲役7年の求刑に対し、無罪判決を言い渡しました。裁判長は「女性の証言は不自然な点や記憶が曖昧な部分が複数認められるなど信用できるとは言えず、被害事実を認定することに合理的な疑いが残る」としたのです。

富山地裁の裁判員裁判で無罪判決が言い渡されるのは初めてで、検察側は「事実誤認に基づく不当な判決だ」として控訴していました。
ことし3月、名古屋高裁金沢支部で始まった控訴審で検察側は、一審の無罪判決について「被害者が激しく抵抗するはずだという時代錯誤の価値観に基づいていて、あまりにずさんで非論理的」としたうえで、女性の証言の信用性について「被害の細かい点が曖昧だったとしても、全体の信用性は否定されない」と主張しました。

そして、23日に行われた被告人質問。男性は紺のスーツ姿で法廷に現れました。現在は26歳、飲食業の会社員だといいます。まずは弁護側の被告人質問が行われました。