国内最高峰のハンドボールリーグ「リーグH」が終盤を迎えている。富山県氷見市が拠点の富山ドリームスに所属する背番号46・庄司清志選手(30)は、約20年に渡る競技生活を今季限りで終える決断をした。かつて中学生時代にハンドボールの聖地・氷見で日本一に輝いた少年は、リーグ通算400得点を成し遂げるトップアスリートに成長を遂げた。すでに現役引退後のゴールは定めている。それは、スポーツ合宿所の経営だ。(全5話・第3話/取材:島津有希)

「ここを見た瞬間に合宿所をやりたい」

氷見に来て4年目。現在は妻・優唯(ゆい)さんと、長女・陽葵(ひなた)ちゃん(3)、次女・桜都(おと)ちゃん(1)の家族4人で暮らしている。

左から妻・優唯さん、次女・桜都ちゃん(1)、庄司清志選手、長女・陽葵ちゃん(3)

庄司選手は「もともと子どもたちのために何かできひんかなって思っていました。家族4人で住む物件を探していたところにここを案内されました。物件を見た瞬間に“合宿所をやりたい”って。氷見での縁。子どもたちへの想い。そして自分自身の合宿経験…それぞれの『点』が、この家との出会いで一気に『線』に繋がったっていう感じですね」

次の舞台は、氷見市阿尾にある築50年の古民家だ。庄司選手は、コロナ禍以降、仲間と過ごす時間が減ってしまった子どもたちを見て、「短時間の指導では生まれない、共同生活だからこそ育つ成長の場を作りたい」と考えている。

同じ屋根の下に集まり、畳の上で雑魚寝をして、友達と他愛もない話で盛り上がる。そんな、自分たちが当たり前に経験してきた「賑やかな場所」を、今度は自分の手で作ろうとしている。

「氷見の空き家は全部見た」——辿り着いた先は、運命の場所だった

氷見市内にあるほぼすべての空き家を見て回ったと話す庄司選手。その中で「ここなら、かつて自分が体験したような合宿所が作れる」と確信し、購入を決めた木造2階建ての古民家。しかし、そこには本人も予想だにしない、さらなる「縁」が待っていた。

実は、その家は庄司選手が働く「トライ・プリント」の創業者・中村豊会長の実家だったのだ。

中村会長自身も、実家が売りに出されていることを知り「思い出の詰まった場所を買い戻すべきか」と深く悩んでいたタイミングだったという。そんな時、仕事にも熱心な社員であり、入社当初からアスリートとしても活躍する庄司選手から「ここで子どもたちのために合宿所を開きたい」という熱い想いを聞き「こんな良いことはない」と喜んで譲ることを決めた。

現在は7月のオープンに向けて着々と改修工事が進んでいる。