経験済みの情報の繰り返しが生む「あっという間に過ぎた」

この原理が、旅路における錯覚を生み出します。 目的地へ向かう道中は、初めて目にする景色、慣れない高速道路のルート、初めて立ち寄るサービスエリアなど、新しい情報が次々と脳に流れ込みます。これらの「出来事」を脳が一つひとつ処理するため、時間が長く感じられるのです。

富山県立大学 岡崎聡講師
「行きはいろいろなものが目につきます。初めて見るものに対して『あれを見た、これを見た』と認識すること自体がイベントになるのです。一方、帰りはすでに景色に慣れているため、一つひとつをイベントとして認識しなくなります」

帰路はすでに経験済みの情報の繰り返しであり、脳にとっては“慣れた”道です。認識される「出来事」の数が激減するため、処理する情報が少なくなり、結果として「あっという間に過ぎた」と感じるのです。