富山市で開催されている第13回日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会総会は1日、患者の視点を交えながら乳がん治療を考える市民講座「乳がん治療と乳房再建 - 知って安心、選べる未来へ -」が開かれ、最先端の乳がん治療と乳房再建に関する情報交換が繰り広げられました。

日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会総会は、10月30日から富山市で開催されていて、全国から集まった乳腺外科や形成外科の専門家が、乳がん治療と乳房再建の現状について多角的な討議を交わしています。

今回は日本人女性の9人に1人が生涯で罹患するとされる乳がんについて、保険適用の拡大や新技術の導入により多様化する治療方法と再建の選択肢に関する正確な情報提供を目的としています。

その一環として11月1日に開かれた市民公開講座では、富山大学学術研究部医学系 形成再建外科・美容外科の佐武利彦医師が、自家組織、人工物、脂肪注入などの再建法や保険制度などについて解説し、写真も使いながらその各選択肢の詳細を紹介しました。

同じく富山大学学術研究部医学系 消化器・腫瘍・総合外科の松井恒志医師が、乳がん治療の現状を報告し、温存手術や全摘出などの手術方法、薬物療法、放射線治療など多岐にわたる治療選択肢や、様々な価値観と選択肢のあるアピアランスケアの取り組みについても説明しました。

このほか看護師の立場からも、厚生連高岡病院の乳がん看護認定看護師の茶谷香織氏が患者支援の現状を報告し、様々な悩みを抱える患者が納得して治療法を選択できるよう、看護師としてできる情報の提供や意思決定の支援、再建後も継続して関わることの重要性を強調しました。

特別セッションでは、NPO法人エンパワリングブレストキャンサーの真水美佳さんと乳房再建の経験者である中村愛子さんによる対談が行われ、中村さんが乳がんと診断されてから、乳房再建に至るまでの経過と、現状について患者の視点で体験を語りました。

会場では乳房再建の写真集の展示ブースや、患者向けガイドブックの紹介コーナーもあり、写真集にモデルとして参加した女性たちが、来場者と談笑する姿も見られ、再建結果を知る機会となっていました。

学会は専門家向けの学術交流だけでなく、このような市民向け啓発活動を通じて、患者と医療者の間の情報格差解消を目指しています。

第13回日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会総会では、11月2日もピンクリボンウオークのフィナーレイベントやトークショーが行われ、乳がん治療と乳房再建の今後を考える場ともなります。