秋の褒章と叙勲の受章者が発表され、長野県在住では、褒章は7人、叙勲は54人が受章します。このうち、信州の伝統工芸や酒造りなど伝統を受け継ぐ思いとその技を取材しました。

伝統工芸・木曽漆器の職人、宮原正岳さん。
塩尻市の木曽平沢地区で江戸時代から続く漆器店の6代目として、およそ60年にわたり漆塗りの仕事を続けてきました。

秋の叙勲で瑞宝単光章を受章します。
木曽漆器 職人 宮原正岳さん:「ここも親父が座って仕事してたとこで、片付けがたいんだよ。なんか片付けちゃうと俺の、親との魂をぶった切っちゃうみたいで、それが俺はできなくて」

手掛けるのは主に、普段使いのいわゆる日用雑器。美しい塗りが目を引きますが、漆器の良さは使ってこそ分かるのだと宮原さんは言います。

木曽漆器 職人 宮原正岳さん:「丈夫で長持して使ってもらえるものを。そういう心がけで作っとるけどね。日常の生活の中で、溶け込んで使ってもらうのが一番の喜びだね」

こちらは、漆を10回ほど塗り重ねたあとやすりで研ぎ出し磨く「堆朱(ついしゅ)塗り」。独特の美しい模様が現れる、伝統の技法です。
木曽漆器 職人 宮原正岳さん:「何年経っても何十年経っても、その奥が深くて、いつも成功しないだよ。失敗もある。そこが極められないところが面白いかな。失敗するとどこがいけなかったのか。塗る工程がいけなかったのか。研ぎがいけなかったのか、仕上げがいけなかったかって、そこでまたこう考えるのも面白いね。尽きないよ」

尽きることのない情熱で漆と向き合ってきた、宮原さん。
技術と文化を後世に繋ごうと、地元の木曽高等漆芸学院や上松町の技術専門校で後進の育成にも力を注いでいるほか、県内の子どもたちへの普及活動にも携わっています。

木曽漆器 職人 宮原正岳さん:「やっぱり職人って、物作りって気持ちの基本、誰にも負けないように仕事をしたいっていうのが、みんなじゃないかなぁ。(名工と言われるようになっても変わらない?)変わらない。また変えちゃいけないと思う。その気心がなくなったら、職人終えた方がいいんじゃない。俺はそう思うけども。定年がないんだで、一生懸命、まだまだ仕事してくよ」
【SBCニュースワイド11月3日放送】




  










