難題「タコの赤ちゃん 何食べる?」
森井さんたちは、ここで人工的に産卵させてタコを育てています。しかしタコの養殖はほとんど前例がなく、試行錯誤の連続です。
最も頭を悩ませたのが「何をエサにするか」です。
森井さん「いろんな栄養強化剤を使って試したが成長が著しく遅くて、『着底』するまで成長しなかった」

『着底』とは、孵化したタコが成長して腕が伸び、壁や地面に付着する状態のこと。着底する大きさにまで育てられない日々が続きました。
そこで森井さんたちは、上天草市や地元の漁師の協力を得て、自然界に生息するタコの子どもを捕獲し胃の中を調べることにしました。
すると、胃の中から『カニのDNA』が見つかったのです。
森井さん「『あぁ、やっぱりか』と。やっと手がかりが見つかった。ガザミ(ワタリガニ)の系統を食べているのではないかと」

着底に漕ぎつけるまで、かかった年月は約6年。施設では、タコが食べるガザミや、さらにガザミのエサとなるプランクトンも育てることにしました。
「タコよりも、エサを世話する時間の方が多いこともある」そんな研究を続けるうち、着底率は、2021年の約30%から4年間で約70%にまで上昇しました。
森井さん「たくましく生きてほしいと思う。一匹でも漁獲量が上がればそれは大成功」
