「どうしても会いたい女性がいる」

去年のノーベル平和賞を受賞した日本被団協の代表委員、箕牧智之さんは、年の瀬が迫るある日、広島市内の高齢者施設を訪ねました。

箕牧智之さん
「会いたかったです、会いたかったです。箕牧です」

「どうぞようこそ、お越しくださいました」

迎えたのは、97歳の阿部静子さん。箕牧さんがどうしても会いたかったという女性です。

阿部さんは18歳の時に爆心地から1、5キロで被爆。原爆の熱線で顔や右半身に大やけどを負いました。命は助かっても、手や顔はケロイドで引きつり、差別にも苦しみました。

箕牧智之さん
「私は3歳で原爆じゃけえ。阿部さんはいちばんの青春時代でしょう。涙が出るよ、阿部さんのことを聞いたら。原爆さえなけりゃあ人生も変わっとるはずなんよ」

阿部静子さん
「一生かかってもなくなりませんでした。原爆の傷は。世の中の皆さんに私の苦しみを味わってほしくないと思って」