■今、枕崎台風をあらためて調査
そんな枕崎台風について、現在、あらためて調査している研究者がいます。広島大学大学院の岩佐佳哉さんです。西日本豪雨をきっかけに防災授業などの活動に参加する中で同じように県内の広い範囲に被害をもたらした枕崎台風に注目したからです。

広島大学大学院 岩佐 佳哉 さん
「西日本豪雨では8400か所以上で土石流が発生。(枕崎台風は)それに迫るスケール感…」
そして、これまで犠牲者がゼロとされていた市町でも命を落とす人がいたことがわかりました。
■オヤジは枕崎台風で死んだのに…
岩佐さんが聞き取りをした一人、東広島市に住む 金原 俊文 さんです。4歳のとき、枕崎台風を経験しました。当時、家は黒瀬川沿いにあり、両親と兄弟の6人で暮らしていました。

「押し入れに入って、どんどん水が増える。みんなで『怖い。怖い』と言って、そのあと、父親に肩車されて行った記憶がある」

あふれた川の水が家の中に押し寄せたため、幼い金原さんを近くの知り合いの家まで送り届けてくれた…。それが、父親との最後の記憶です。
金原 俊文 さん
「体温から息づかいから、それはずっと覚えていますね」

父親は1週間後、近くの川沿いに広がる田んぼの土の中から遺体で見つかりました。

当時の状況は、金原さんの10歳年上の兄が、のちに思い出しながら手記としてまとめています。


金原 俊文 さん
「最初からおかしいと…。わしのおやじ、死んでいるじゃないかと。当時、混乱していたのはわからないでもない。原爆の1か月後なので、それは理解するけど。あとから実際に調査したのに、死者数に入れられないのはおかしい」