■”西日本豪雨に匹敵” 土石流の発生スケール
岩佐さんは、枕崎台風による大雨で県内で起きた土石流の数についても再調査しました。使ったのは終戦から2~3年後に、アメリカ軍が撮影した空中写真です。500枚以上の写真に広島県内の広い範囲が記録されています。
岩佐さんは、これらの写真を使って土石流の数を一つ一つ拾っていきました。

広島大学大学院 岩佐佳哉さん
「ここに大きな白い筋があるが、土石流が流れた跡。この位置に大野陸軍病院。当時、京大の方が亡くなった。それが、ここにあった」

その結果、県内で起きた土石流の数は6700か所近くに達していたことがわかりました。県の災害史には載っていない場所で、市町村の郷土史には犠牲者の報告であった場所で、実際に土石流が起きていることも確認できたといいます。

岩佐 佳哉 さん
「県の中で6668か所、土石流が起きた。西日本豪雨が8000か所以上起きているので、規模感・スケール感・範囲の広さとしても枕崎台風は西日本豪雨に匹敵する」
77年前に広島を襲った台風について、あらためて掘り起こすことで明らかになった事実―。

岩佐さんは、今回の研究の成果を防災に役立ててほしいと考えています。
広島大学 大学院 岩佐 佳哉 さん
「西日本豪雨では、県のかなり広い範囲で現象が起こって、いろんな所で『まさか自分が』という声がたくさん聞かれた」
「実は77年前に同じような現象が起きていて、それを知っていれば、もう少し災害に対する意識も変わったんじゃないかなと」
「枕崎台風を含めて過去の災害を振り返ってもらって、また、将来の防災に活用してほしい」

( 取材:RCCウェザーセンター 気象予報士 岩永 哲 )