広島牛の最高級の肉の質を競う県畜産共進会です。先月の大会では、三次市の牧場が出品した肉が最優秀賞を受賞。直後のセリではキロあたり3380円の最高値がつきました。


ところが、そのあと行われた業者との1対1の取り引きで、これを上回るキロ3800円の値をつけた牛がいました。肥育期間38か月の榊山牛です。38か月は、松阪牛の中でも最高級の「特産 松阪牛」と同じです。


肉を買い取った「ふるさと」の社長が、農家をねぎらいました。

焼肉ふるさと 海田安章代表
「すごいのを作りましたよ。これだったら、まず、全国の銘柄牛に負けんよ」


農家(熊野町) 馬上幸治さん
「いや、これは達成感ありますよ」

共進会に肉を出品したほかの農家も興味津々です。

ほかの農家たち
「肉も全然、違う。これが、榊山牛。その値段で買ってくれる人がいれば、自分もやりたいが、リスクが多すぎる」


「エサ代もかかりますしね」


農家にとって長期肥育のハードルは高く、生産者は今のところ、馬上幸治さんだけです。

出荷直前の先月22日、熊野町の牛舎を訪ねました。これが、38か月の牛です。


馬上畜産 馬上幸治代表
「姿形、まあ、ナンバーワンでしょう」


馬上さんの飼育頭数は200頭。これまでは長期肥育の最低ラインである32か月で出荷していました。

馬上幸治代表
― なぜ38か月の肥育に挑戦?
「テストです。38か月まで飼ったら、どういう味になるかというテストです。どの子もいけるわけじゃないんです。ちゃんと選んで、この子ならいけると感じたものを選んで、きょうに至る」

馬上さんの信条は、牛の世話に手間ヒマを惜しまないことです。例えばエサはメーカーの配合飼料を使わず、トウモロコシや麦、大豆かすなどをその都度、かくはん機で混ぜたものを与えます。


牛舎内は、においがしないよう徹底した掃除をします。32か月の長期肥育をしても牛が食欲をなくしたり、体調を崩したりしないようにするためです。


その馬上さんにして38か月の肥育は未知への挑戦でした。


馬上幸治代表
「松阪牛さんとか近江牛さんもそうですし、意識しましたけど、牛が『もうダメです』ってサインを出しゃ、ダメなので。そりゃ本当、こっちのエゴですから。でも『ダメです』ってサインを出さなかったので。期待通りに食べて、期待通りの体形になって…」

馬上さん自慢のこだわりのエサですが、ウクライナ戦争後は月々80万円ほど出費が増えているそうです。キロあたり3800円という価格には、高騰するエサ代をまかなう意味もあります。


焼肉ふるさと 海田安章代表
「こうやって保証しとったら、要はエサとかもちゃんとふんだんに金をかけられるわけですよ。エサ、ケチったら絶対においしくならないから。肉は、エサで味を作るからね」


こうして迎えた試食会…。会場の料理店は榊山牛の専門店です。


店の代表・平野さんがサーロインを見て、まず確かめたのが脂でした。