普天間基地の名護市辺野古の沖合への移設工事に伴い、沖縄防衛局は辺野古沖合の埋め立て工事に使用する土砂を本島南部での調達を計画しています。沖縄戦の激戦区となった本島南部では、いまだに戦没者の遺骨が見つかっていて、遺骨が含まれている土砂が基地建設に使われる恐れがあるとして、防衛局の計画に反対の声があがっています。

こうした中、先月26日に糸満市の西川区公民館では遺骨土砂問題について、当事者遺族らとの意見交換会が行われました。


Qあの南部の土を(辺野古の)埋立に使うのはどうですか?
沖縄戦で姉を亡くした仲座ヨキさん
「これは絶対に反対ですよ。遺骨はないかもしれませんがね。ここに(戦没者の血が)しみ込んでいるんですよ」

沖縄戦で叔父を亡くした渡慶次律子さん
「おじぃおばぁから良く聞いた話なんですけど、(おじの)遺骨箱を開けてみたら石だったって。DNA鑑定で(遺骨を)引き取れるかもしれないねって。一縷の望みを込めて参加した」

意見交換会を主催したのは遺骨収集ボランティア・ガマフヤーの具志堅隆松さんです。

遺骨収集ボランティア・ガマフヤーの具志堅隆松さん
「戦争で殺された人たちの血のしみ込んだ土砂を新たに戦争のための基地に使うのはこれは戦没者に対する冒とくですよ。どうしても認める訳にはいかないです。許す訳にはいかないです」


普天間基地の辺野古移設に伴う工事を巡って。おととし4月、国は県に対して軟弱地盤の改良のために”変更承認申請”を提出。本島南部などで戦没者の遺骨を拾いDNA鑑定によって、遺族にかえす活動を40年続けてきた具志堅さんは、計画の撤回を国に訴えてきました。

しかし一人で発信する限界も、感じていました。

ことし8月15日の東京の靖国神社。多くの参拝客が訪れる中で。具志堅さんも神社の前にいました。

遺骨収集ボランティア・ガマフヤーの具志堅隆松さん
「戦没者の遺骨が海に捨てられようとしています。どうか助けてください」

辺野古埋め立てに使う土砂を本島南部から採取することに抗議するハンガーストライキを行っていました。同じ場所で、具志堅さんの支援者が行ったのが、南部土砂を埋め立てに使用する賛否を問うシール投票です。


具志堅さん
「(国が)土砂を使って埋立をしようとしているので」
シール投票の参加者
「そんなことは絶対にダメ」
「そうなんだ。ダメじゃん。そんなのダメに決まってんじゃん」
「これはでも良くないよ。海に捨てていいわけないじゃないですか。だって今我々が生きているのはね、この方たちがいらっしゃったお陰で生かされていますので。それはやっぱり良くないと思いますよ」

東京で初めて実施したシール投票では「南部の土砂使用には反対」という声が多く上がりました。一方で、批判的な人たちも。


批判的な意見を持つ人
「いつの段階で(遺骨が出たか)分からないやないか」
「だから遺骨と基地を一緒にするなという話や、お前らそれでこじつけてるだけや」

最高気温34度、ハンガーストライキ2日目の過酷な条件の中で受けた妨害ともいえる行為。それでも具志堅さんは訴え続けました。

遺骨収集ボランティア・ガマフヤーの具志堅隆松さん
「みんなに理解できるっていう事は、思わない方がいいなっていう。みんなそれぞれ考え方があるから。まぁそれでいいと思います」

2日間のシール投票の結果、南部の土砂を辺野古埋立に使用する事に反対728、賛成30でした。この結果と共に分かったことがありました。


遺骨収集ボランティア・ガマフヤーの具志堅隆松さん
「この問題は、問題の本質というのは、みんなにこのことが知られていないのが問題だと思いました。内地には全然伝わってなかったです」

シール投票の参加者の多くは遺骨土砂問題を初めて知る人達でした。

シール投票の参加者
「実は知らなくて。(通りすがりに)どんな思いがあるんだろうなと気になって。聞かせて頂きました。知らない人には、こういうことがあったよと話をしていけたらいいと思っています」
「基地の埋め立て反対は聞いたことあったんですけど、遺骨が混じっている砂という事は聞いたことがなかったので。亡くなった方に対する仕打ちじゃないなというものがある」

これまでに分かったのは、全国的に遺骨土砂問題がほぼ知られていない事。そして問題を知った多くの人が具志堅さんに賛同してくれる、という事でした。

遺骨土砂の問題を全国へ。伝えていくための大きな流れを作りたい。辿り着いたのが当事者遺族の声を集め、伝えていくことでした。

「姉の父も足をやられて(手りゅう弾で)自爆した一人です。その骨は見つかっていません」


遺骨収集ボランティア・ガマフヤーの具志堅隆松さん
「やはり勇気をもって語ってほしい。私たちはそれを国に伝えます。意識を掘り起こしていると思っています」

当事者遺族の声を携えて。具志堅さんは来年1月18日に上京し、防衛省の埋め立て計画に抗議します。