写真集『命の記憶』

♪時には母のない子のように…黙って 海を見つめていたい…
 時には母のない子のように…一人で 旅に出てみたい…

フォークソングが大ヒットしていた1970年代、隔離の中で生きていた人たちもそのメロディーに耳を傾けていたのか。撮影日誌には、こうある。

ー 「愛楽園から出ては生きられない、生きる状況、範囲が限定されているその中で、何を見つめ生きるのか。今5時、酔っている、カルメン・マキのレコードを聞く」 ー

今年5月、半世紀の時を経て刊行された写真集『命の記憶』。1975年前後、ハンセン病療養所沖縄愛楽園を訪ねた写真家が、入所者たちの営みを記録した。

福島県在住の鈴木幹雄さん。東京を拠点にカメラマンとして活動していた20代の頃、撮影中に出会った男性にこんなことを言われた。

収録されている写真を撮影した 鈴木幹雄さん

鈴木幹雄さん
「急に、沖縄に愛楽園というハンセン病の施設の人たちが差別と偏見に大変苦しんでいる。それを正す写真を撮ってきたまえ、園長は友だちだから手紙を書いておく、と大きな声で言われて」