映画『宝島』の1シーンから Ⓒ真藤順丈/講談社 Ⓒ2025「宝島」製作委員会

――原作は読むだけでも生々しく、沖縄の歴史や現実がリアルに浮き上がる。それが映像になったものをご覧になって、率直な感想は

真藤
小説を書くときは、言語化不能な混沌としたもの、人々のなかなか文章に表せないようなものをいかに表現するか、いかにそれで物語を紡ぐかに苦心するんです。それが映像だと、ドンと絵の力で1発で伝わってくるものもあったし、絵の力で「くらう」ものはあるなと思いました。小説では、なかなか伝えきれないような情景、格闘みたいなものがダイレクトに伝わってくるので、凄かったです。

映像化されていくと、小説のマインドの部分といいますか、そういうところがだんだん変わっていったり、改変されたりするものが普通なんですけど、そういうこともなく、“小説の肝” みたいなものを確実に残して作っていただいた感覚ですね。

――印象に残っているシーンは。

真藤
コザ騒動といわれる場面については、あの作品において、言語化できない混沌のピークみたいなものなので、本当にちょっと嫉妬すら感じましたね。単純に一元化できない多層的な人々の感情のるつぼみたいなものが、本当によく表現されていたなと思います。