「秋を待たで 枯れゆく島の青草は 御国の春に よみがえらなむ」
これは、旧日本軍で沖縄戦を指揮した牛島満司令官の「辞世の句」です。陸上自衛隊第15旅団のホームページに掲載されているこの句について、中谷防衛大臣の発言が波紋を広げています。
「平和教育」と「短歌」、それぞれの有識者の見解を通してこの問題について考えます。
沖縄戦を指揮した第32軍、牛島満司令官。本土防衛の持久戦に持ち込むため「南部撤退」を命じ、その後、多くの住民が犠牲となりました。
牛島司令官の「辞世の句」の掲載について、沖縄戦研究者からは「皇軍美化を連想させ、沖縄戦犠牲者への配慮がない」などと批判の声があがり、掲載の是非が問われるなか―。

▼中谷防衛大臣
「私はあのやはり先の大戦において犠牲になった方々に心からの哀悼の意を表して、その教訓を活かしてこれからの平和をしっかりと願うという歌と受け取っております」
「辞世の句」に対する独自の解釈を語り、ホームページから削除しない方針を示した中谷防衛大臣。後日、再びその解釈について問われると―。
▼中谷防衛大臣
「臨時第1混成群の初代群長であります、桑江1佐の訓示について述べたものであります」

「辞世の句」を引用した沖縄の本土復帰当時の幹部の訓示を根拠に、その正当性を改めて主張しました。波紋が広がる大臣の発言について、平和教育が専門で沖縄戦に関する調査・研究を行う琉球大学の北上田源准教授は―。
▼琉球大学 教育学部社会科教育専修 北上田源 准教授
「皇軍の論理をすごく分かりやすい形で表しているそういう句なんじゃないかと思っています。やっぱりこの句が作られた背景や歴史的文脈をかなり無視した恣意的な解釈だと言わざるを得ない」

北上田准教授が注目したのが、防衛省が示す「辞世の句」の掲載理由です。
▼防衛省 萬浪学 大臣官房長
「これまでの部隊の歩みを正確且つ丁寧に説明することが地元の皆様に第15旅団を身近な存在と感じていただくために不可欠と考えまして―」
▼琉球大学 教育学部社会科教育専修 北上田源 准教授
「沖縄の人たちの身近な存在であるということを分かってもらうために、これを載せますっていうことがすごく露骨なやり方だなと思って。自衛隊を配備して増強していこうという流れがあるなかで旧日本軍との連続性を強調する、それをなんとか浸透させていくことで地域社会に入り込んでいこうという意図があるんだろうなと。これを理解できるっていうことは沖縄の県民に問わないといけないというか『これで本当にいいんですか』ということを多くの人に考えて欲しい」