RBCとTBSの共同制作映画「太陽の運命」がまもなく公開される。県民の民意に寄り添い、国と対峙し、常に選択を迫られてきた沖縄県知事2人にスポットをあてた今作。監督を務めた佐古忠彦さんはなぜ今、沖縄県知事の映画をつくったのか、なぜ2人の知事「大田と翁長」を取り上げなければいけなかったのか、佐古監督に聞いた。



Q.なぜ今回、大田昌秀さん、翁長雄志さんに焦点を当てたのか?

佐古忠彦監督
「8年前に映画”カメジロー”をつくった。あのカメジローで描いた戦後史は、その後復帰に結びついた。しかしその先の世界がどうだったのかというと今だと思う。その現代史を、常に選択を迫られている沖縄の人々の象徴である沖縄県知事を通して描きたいとずっと思っていた。大田昌秀さんと翁長雄志さんはそれぞれ革新と保守の代表格で、まったく違う場所にいて、対立の関係にあった。この2人が長い時を経て、その歩みも発する言葉もすべてが重なってくる。それはいったいなぜなのか。そこにこそ沖縄の歴史があって、それを伝えることは沖縄そのものを表現することになるとの思いがあった」

Q.基地問題をめぐって県と国が対峙してきた歴史も振り返っているが、“映画作品”として作り上げるために心がけていたことは?

佐古忠彦監督
「この30年、いろいろとニュースを伝えてきたが、ひとつひとつは点なんです。だが、そのひとつひとつの点を30年の時の流れに乗せると線になって、今である理由がみえてくる。ひとつひとつを追いかけてエピソードをみていくと、そこにあるのは極めて人間的な側面だった。それは知事だけでなく、橋本総理の心の動きを含めてとても人間的なんだなと。いわば大田さんと翁長さんがひとつに重なっていくに至るすべてが人間ドラマだった。そこに映画で伝える醍醐味があると思ったし、2人が残した言葉をいかに紡いでいくか、ドラマとしてどうみせていくかに心を砕いた作品だ。



Q.佐古さんが思う“沖縄県知事”とはどんな存在か?

佐古忠彦監督
「よく言われる47都道府県のなかで最も苦悩を深める特異な存在だとみなさん表現するが、私はいまもって不条理のない沖縄を目指し、民主主義を諦めない場所というのは沖縄だと思うが、その象徴こそが沖縄県知事ではないか」

Q.視聴者へのメッセージをお願いします。
「この映画をご覧いただくことで沖縄そのものが何を求めて闘ってきたのか考えることになるし、そこに国がどのように対峙してきたのか、そこに国の姿が見えてくる気がする。じゃあ私たちはどこに向かっていけばいいのか、その議論をする材料をみつけていくことにもなるのではないか。沖縄県知事の歩みは沖縄のみなさんの歩みそのものではないかと思いますので、映画をご覧いただくことでその歴史を体感していただきたいし、30年前のことがよくわからない若い世代も追体験ができる機会になればと願っている」

RBCとTBSの共同制作映画「太陽の運命」は、3月22日(土)那覇市の桜坂劇場で公開。舞台挨拶も予定されている。


【佐古忠彦】
TBSの報道番組「News23」の元キャスターで、四半世紀以上、沖縄の基地問題などを取材。これまでなど沖縄をテーマに映画を制作してきた。沖縄戦後史を描いた『米軍が最も恐れた男 その名は、カメジロー』や、戦中史を描いた『生きろ 島田叡-戦中最後の沖縄県知事』に続く監督最新作が本作「太陽の運命」だ。大田昌秀、翁長雄志、2人の県知事にスポットを当てる。