巨大な船のエレベーターがあります。旅客船や作業船、合わせて年間およそ150隻の船が、点検・整備のために陸揚げされます。

離島県沖縄には、大小さまざまな旅客船があります。その旅客船には1年に1回の船検(せんけん)と呼ばれる船の点検が義務付けられています。複数の船を陸に揚げることが出来るこの施設は、点検作業の効率化はもちろん、船会社の維持コストの軽減にも大きな効果をもたらしました。
新糸満造船 松浦快奏 会長
「(県内)全ての離島航路の船舶に関しては、全てドックは可能というような造船所になっております。もしこれがなかったらですね、遠く九州の方までわざわざドックの為に航海をしていかないといけないということになっていたので」
県内での点検整備が出来るメリットはとても大きいものです。しかし取り扱う船が増える一方で、以前から抱えていた問題も大きくなってきました。


新糸満造船 松浦快奏 会長
「特にですね船底にカキ殻がたくさん付着していて、これを落とすと残材が非常に出てくる。この残材は年間にだいたい20トン以上出てくるんですね、でこれが全て産業廃棄物になっていくので」
構内に山積みされた貝殻を含め、新糸満造船の廃棄物処理にかかる費用は、年間およそ400万円。この内、貝殻を再利用することで100万円ほどの費用が削減されました。
純水と貝殻を一緒に砕く技術で、ナノサイズまで超微粉砕することに成功。ナノレベルまで小さく出来た事で、それまで発揮されなかった能力が格段に上がり、有効利用の幅が広がったと言います。
新糸満造船 松浦快奏 会長
「沖縄県では養豚業が盛ん、この養豚業の一番のネックは臭いがひどい。この臭いをなんとかとりたい。ナノシェルを使って臭いを取ってみたらどうか、ということですね、まず始め色々とやってみました。豚糞を県内の業者さんから頂いて、それをこのナノシェルを入れて撹拌してですね、殺菌と消臭ですね、臭いの実験をいたしました。
濾過したらものすごくきれいな水になって、特に BOD がですね100以下というぐらい、そのまんま海に流せる川に流せるというぐらいの試験結果が出ておりました。私たちは海に関する仕事をやるもんですから、何とか海にお返しをしたいというのがずっとありまして」

県外の企業と7年前から取り組んできた貝殻の有効活用。神奈川県立 産業技術総合研究所で行われた試験結果ではナノシェルの抗菌、抗ウイルス効果が証明されました。抗ウイルス試験では、アルコールと次亜塩素酸水。両方の特性を持つ試験結果が得られました。
抗菌試験でも十分な殺菌効果が認められています。船の底についた貝殻が、強アルカリの除菌液。ナノシェルへと生まれ変わりました
新糸満造船造修部 宮城 弥栄子さん
「キッチンでよく使われる方ももちろんなんですけど、ペットを飼われてる方がいたりして、ナノシェルは消臭にも抜群なのでペットの座っているクッションとか」
地域活性化という思いから、ナノシェルの販売は、糸満市物産センター遊食来(ゆくら)とWebサイトのみで行われています。沖縄発。糸満発にこだわる強い思いの表れです。
Q・売れ行きは
新糸満造船 松浦快奏 会長
「売れてない(笑)。私たちは例えば、これをやり始めたのも私たちが儲けるとかそうじゃなくて、結局これをやるがために地元が少しでも活性化すれば助かるかなという風に思っているんですよ」

処分されるはずの貝殻を独自の技術で有効利用し、地域活性化や、環境問題解決への広がりは、SDGsの目標へとつながっています。
新糸満造船 松浦快奏 会長
「(ナノシェルと色々な廃棄物)二つを混ぜて新しいものを作って、それをみんなで使える方法ないかなということでやってるんですけど。地域を巻き込みながら新しい産業が起きていけばいいのかなという風に思ってます。だから今ここにあるのはひょっとしたら宝の山かもわからない」