大分県宇佐市の漁師町に全国的にも珍しいお盆の伝統行事があります。にぎやかに故人を送る家族の想いを取材しました。
色鮮やかな五重塔に流れ出る滝、きらびやかに輝くのは御殿灯籠です。宇佐市長洲地区では初盆を迎えた家が故人の霊を送り出す伝統行事「精霊送り」が今も続けられています。

高橋善純さんは今年、母親の初盆を迎え姉や子ども、孫たちが集まりました。カラオケ店を営み、今年6月に亡くなったキヨミさん(享年81)。息子の善純さんは明るい人柄だった母を想い、豪華絢爛に送り出すことを決めました。
(高橋善純さん)「派手なおふくろだった。どうにか頑張って、してあげようと兄弟と家族と意見を得て、できたことがうれしい」
午後2時、友人らが集まり家族と一緒に大勢で御殿灯籠を外に運び出します。紫や白の花を飾り付け最後の見送りへ準備を進めます。
子どもたちも手伝いながら灯籠や提灯を持ち、列を作って出発。地元の人に見守られながら2キロ離れた墓地まで進んでいきます。
(地元の人)「毎年見るんですけど、大変立派な灯籠ばかり。お盆が過ぎていくので寂しい気もする」
(キヨミさんの夫)「お別れがしたかったよね。うん最高じゃな」
役目を終えた御殿灯籠を燃やすため、墓地には初盆を迎えた地区のほかの家族も集まっていました。毎年、80台ほどあった灯籠は年々少なくなり今年は10台程度に…
また灯籠づくりをする会社も市内では1社だけになったといいます。
高橋さんの御殿灯籠にも火が点きました。真っ赤に燃え上がる炎を見つめながら、みんなで手をあわせ、キヨミさんを送りました。
(高橋善純さん)「盛大にすることが母の望みかと思っている。大変喜んでいると思う。いい初盆ができたと」
にぎやかに故人を偲ぶ、全国でも珍しい宇佐市長洲地区の伝統行事は、家族の温かい気持ちで今年も受け継がれました。