後を絶たないSNS上で飛び交う誹謗中傷。こうした問題について法改正や相談体制の整備を進める動きがある一方、被害はいまも続いています。

SNS上での誹謗中傷などを受け、自ら命を絶った女子プロレスラー木村花さんの母、響子さんはSNSについての講演や法改正のための活動を行っています。10月に講演のため大分市を訪れていた響子さんを取材、胸の内を語ってくれました。

木村響子さん:
「死ねという言葉だったりキモいって言葉だったり一言で攻撃力のある言葉にして言ってしまう」


花さんが亡くなったことをきっかけに、侮辱罪を厳罰化する改正刑法が成立し7月に施行。1年以下の懲役や30万円以下の罰金などが新たに追加されました。

木村響子さん:
「今となっては花も帰ってこないこともわかっていて、でもせめてやってあげられることがまだまだ残っていると思っていて、なんとか歩んでいる」

後を絶たないプライバシーの侵害などのネットトラブル。法務省によりますと、去年、ネット上での人権侵犯の数は9年前と比べ、2.7倍に増えています。


こうした問題を取り扱ってきた貞永憲佑弁護士はことし2月、大分県内の女性から「お金を借りて返さない」などとSNSに身に覚えのない書き込みをされたと相談を受けました。女性が訴えを起こした結果、書き込んだ相手に対し、アカウントごと削除という命令が裁判所から下されました。

貞永法律事務所・貞永憲佑弁護士:
「お金を借りたことに心当たりはないし、そういったことをする人が周りにいるとも思えないというような状況でかなり戸惑っていた。大分県の中で結構こういう事件が起きているというのが正直な感想です」


侮辱罪の厳罰化によって量刑は重くなりましたが、罪に該当する範囲が広がったわけではありません。そのため、「被害にあった場合は専門機関への相談が大切」と貞永弁護士は強調します。

貞永法律事務所・貞永憲佑弁護士:
「いつ自分が被害に巻き込まれるかわからないということはあるので、(被害に遭ったら)頼れる人や機関にすぐ相談したほうがいい」

SNS問題に対応するため、大分市は特定のサイトをチェックするモニタリングに加え、誹謗中傷相談の専用窓口を開設しています。

大分市人権・同和対策課 佐々木利通参事補:
「インターネット、スマホの画面の向こう側には生身の人間がいるということを意識して利用してほしい」

加害者にならないようSNSの使い方に注意が必要な一方、「心無い言葉を受けた人も、自分を責めないことが大切」と響子さんは話します。

木村響子さん:
「周りに迷惑をかけてしまうと思い、悩みを抱え込んでしまう。こんなこと言われて悲しいよっていうのをみんながもっと簡単に伝えることができたら追い込まれる人が少しでも減っていくんじゃないかと思う」

法や関係機関の整備、社会全体の理解が広がりつつある中、被害にあった場合、まずは誰かに相談することがこの問題の根絶につながるといえます。