大分を舞台にした物語で、2021年に本屋大賞を受賞した小説『52ヘルツのクジラたち』が映画化され、3月1日から全国で公開されます。映画を手がけた成島出監督と原作者の町田そのこさんの2人に撮影の裏話や見どころを聞きました。

3月1日から全国で公開される映画『52ヘルツのクジラたち』。2021年本屋大賞を受賞した町田そのこさんのベストセラー小説で、家族に虐待された過去を持つ主人公がかつての自分と同じような環境にいる少年と交流する物語です。

©2024映画「52ヘルツのクジラたち」製作委員会

主演はいま注目の杉咲花さん。そして志尊淳さんや宮沢氷魚さん、小野花梨さんら豪華キャストが集結しています。

都会で傷ついた心を癒すため主人公がやってきたのが大分。大分市佐賀関の漁港では映画の重要なシーンが撮影されました。主人公と少年が初めて出会う場面では、雨の中で2人が心を通わせ始める瞬間など、印象的なシーンとなっています。

©2024映画「52ヘルツのクジラたち」製作委員会

映画を手がけた成島出監督は、「大分の風景が物語のイメージ通りだった」と振り返ります。

成島出監督

(成島出監督)「お金のこともあるから関東近郊で撮影してもいいかなと思ったけど、大分に一度候補地を見に来たらやっぱりもうここで撮らないとダメだなって思いました。堤防とか全部ファーストコンタクトで決めたんですよ。やっぱご縁だなと思って、なんか大分に呼ばれている感じがすごくしました」

このほか、佐賀関のシンボルとなっている大煙突や、海岸沖の岩にかかる巨大しめ縄をバックにしたワンシーンも撮影されています。

一方で、お昼時には地元客でにぎわう「媛乃屋(ひめのや)食堂」が、少年の母親(西野七瀬さん)が働く店として登場します。撮影の期間中、杉咲花さんも何度も店に訪れ、食事を楽しみました。

©2024映画「52ヘルツのクジラたち」製作委員会

(媛乃屋食堂・姫野正博店長)「食事をしに杉咲花さんは3日連続で来てくれました。お魚から全部。りゅうきゅう食べて、とり天食べて、すごく喜んでくれましたね。普段経験できない事なんですごく楽しかったです」

2週間後に迫った公開に向けて、大分県内の書店では特設コーナーが設けられています。原作は多くのファンに愛されている小説で、映画化をきっかけに本を購入する客が増えているといいます。

(紀伊国屋書店アミュプラザおおいた店・福島伸男店長)「映画化の話が出てから、なお一層本の動きが良くなっています。まだ読んでいない方にも手にしてほしいと期待しています」

原作者は福岡県出身の町田そのこさん。町田さんも映像化された作品に手応えを感じています。

町田そのこさん

(町田そのこさん)「大分がすごく好きで、迷いクジラが大分にやってくるというのは祖母から聞いていたので、クジラモチーフに書くなら大分と思ったのがそもそものきっかけです。自分が書いたものとわかっていても、映画は涙なしでは見られませんでした」

なじみ深い大分の風景が、物語の随所に登場する映画「52ヘルツのクジラたち」。3月1日から全国で公開されます。

(成島出監督)「お世話になった風景をまずは大分の人に見てもらいたいですし、キャストたちが本当に全身全霊で役にぶつかってくれた映画なので、ぜひ大きなスクリーンで見ていただけたらと思います」