長期間の放置で“権利関係”が複雑になることも
【住】3年以内の登記ということですが、登記するまでの期間が長期化すると、どういった問題が出てくるのですか
【平】はい。長期間にわたって相続登記をせずに放置した結果、相続人の数が増えて権利関係が複雑になり、相続登記が困難になってしまうことがあります。
また、相続登記をしていないと不動産の売却や担保としての利用ができません。

【住】なるほど、相続登記を行わないと周りに迷惑をかけるだけでなく、相続人にとっても不都合なことが起こるかもしれないということですね。
つまり、子供や孫の代のためにも相続登記が必要だということで、それが今回、義務化されたということですね。
私の実家は福岡県、いま住んでいるのは長崎県です。土地を相続しても「近くに住んでいないため、管理できない」こともあると思うのですが、その場合はどうしたら良いのでしょうか?
管理が難しい場合『国庫帰属制度』しかし審査には8か月
【平】はい。土地の管理が難しい場合の選択肢の一つとして、「国庫帰属制度」という、相続した土地を国へ譲渡する制度が、今年4月から始まっています。管理されない土地は衛生面や治安面で周囲に悪影響を及ぼしかねないことから、法務局では制度の利用を呼び掛けています。

長崎地方法務局 平野孝敏 首席登記官:
長崎で今後生活する予定がないと、ただ土地は管理をしていかなくてはいけない。近所に迷惑をかけるわけにもいかないので、例えば『草刈り』であったりとか、『木が生い繁らないように』だとか、『空き家にならないように』とか “管理”に一定の費用もかかります。その中で『国庫帰属』という形の選択も一つあるのかなと思っております。

【平】先月末までの間に「国庫帰属にできないか」という相談が、長崎地方法務局に351件、実際の申請も34件あったそうです。
ただ、帰属には “一定の要件”があり、その審査におよそ8か月かかるため、現時点で帰属が決まったものはないそうです。
相続登記は、これまで“任意”であったものの、災害復興や街の活性化の観点からは必要であり、来年から“義務化”されるのは、当然の流れだと思います。
ただ、相続に至る過程や事情は、それぞれ異なるため、その手続きは、一般の人にとっては複雑だと思われます。
法務局では無料相談を受け付けていますので、相続登記にあたっては、法務局や司法書士などの法律の専門家に早めに相談することが大切だと思います。