現在「953円」の長崎県最低賃金。12月からは78円引き上げられ「1031」円となることが決まりました。パート・アルバイト従業員にとっては時給アップで給料が上がることが期待される一方、家庭の事情などによっては「従来通り働き続けられるのか」といった不安の声も。
また雇う側の企業にとっても人件費の増加は避けられず、経営の見直しを迫られることが予想されています。物価上昇が続き賃金アップの恩恵を感じづらい状況も続く中、今回の最低賃金の引き上げで、私たちの暮らしにはどのような影響が考えられるのでしょうか。
住吉光アナウンサー(以下:【住】)長崎の暮らし経済ウイークリーオピニオン。平家達史NBC論説委員とお伝えします。

平家達史NBC論説委員(以下:【平】)今回は私たちの生活と直結するテーマ「最低賃金引き上げ暮らしへの影響は」です。

過去最大78円の引き上げで初めて1000円の大台超え

【平】9月に開かれた労使の代表らによる審議会で、長崎県の最低賃金は「1031円」に引き上げられることが決まりました。これは去年と比べ78円のアップで、引き上げ幅は過去最大となっています。
【住】引き上げ幅の大きさもさることながら、やはり1000円の大台を超えたインパクトは大きいですね。

【平】そうですね。しかしながら最低賃金の大幅な引き上げは人件費の上昇に直結し企業にとっては経営を圧迫される事態にもなりかねません。このため先に述べた審議会では労使の意見が折り合わず、採決時に使用者側が退席する異例の展開となりました。
労使代表らによる審議会双方の主張は

9月2日に開かれた長崎地方最低賃金審議会。中央の審議会が示した全国平均63円の引き上げ目標に対し、長崎県ではこれを上回る78円の引き上げが答申されました。


過去最大となる引き上げ幅を巡り行われた採決では、使用者側の代表が「訴えが十分に反映されていない」として退席する場面も見られました。

【使用者代表委員】長崎経営者協会・峯下隆久専務理事「急激な上げ幅は(経営に)いろいろと悪影響が出る」「そのへんを審議の場で訴えてきたんですけれども結果的にこういう形で採決になりましたので、反対の意思をはっきり分かりやすく示すために退席させていただいた」「(企業の)中には事業の存続について考えるところも出てくるのではないかと危惧しております」
一方、労働者側は大台となる1000円を超えたことに、手応えを口にしました。

【労働者代表委員】連合長崎・岩永洋一事務局長「長崎県内の労働者少なくとも6万8000人に影響がある。まずは誰もが1000円ということを目指してきましたので、そこについては一歩大きく踏み出したのかなと」
【住】審議会も異例の展開ということでしたが、特にここ数年は最低賃金がポンポンと上がってきたのでそれだけ大きな変化があったといえる思います。長崎では紆余曲折を経て引き上げ額が決まったようですが、全国的な動きはいかがでしょうか。
全都道府県1000円超えの衝撃 メリットと課題は

【平】今年は各都道府県とも軒並み1000円を超えていて、全国平均額は「1121円」と1100円を超えています。

九州・沖縄の各県を比べてみると、長崎は福岡・大分・熊本に次いで4番目の高さで、1位の福岡県との差は去年が39円だったのに対し今年は26円に縮まりました。

しかし全国47都道府県でみると、長崎県は岩手・秋田と並び38位タイという位置づけで最も高い東京都の「1226円」と比べるとその差は195円と、まだまだ大きな開きがあるのが現状です。
【住】最低賃金がこれだけ引き上げられるとなると、私たちの暮らしにはどのような影響が考えられますでしょうか?

【平】まず良い影響としては、
・人によって給料が上がる可能性がある。・近隣県との賃金格差が縮まることで県外への労働力流出に歯止めがかかる可能性がある。などが考えられます。一方、課題としては、
・特にパートやアルバイトの人は時給がアップすることで、これまでより短い労働時間で「年収の壁」に到達するため人手不足に拍車がかかる可能性がある。などがあげられます。
【住】企業側も難しい対応を迫られそうですね。

【平】新たな最低賃金は例年10月から適用されますが、長崎県では今年は12月1日からとなっていて、賃上げに対応する企業側への配慮もあるのではないかとみられます。

実施時期が遅くなったとはいえ、人件費の上昇分を商品の価格に転嫁できなければそのまま利益を圧迫することになりますし、最低賃金の大幅引き上げでアルバイトの時給が正社員の給与を上回るケースも出てきており、若手社員の給与体系の見直しにつながる可能性があります。さらに人件費を抑制するために雇用者数を減らすことも考えられます。
現場で働く人たちは今回の最低賃金引き上げをどう受け止めているのか、取材しました。