施行前の『相続』も対象に 正当な理由ない場合 過料10万円
【住】『相続登記の義務化』を具体的に教えてください。

【平】来年4月1日以降、“相続が発生”した場合──
不動産を取得した相続人は、取得を知った日から3年以内に、
遺産分割で不動産を取得した相続人も、遺産分割が成立した日から3年以内に『相続登記の申請』をしなければなりません。

また、制度開始の来年4月1日以前の相続も対象になります。
具体的には『来年4月1日』または『不動産を相続したことを知ったとき』の “いずれか遅い日から 3年以内に申請する義務”を負います。
例えば、今日(2023年11月29日)『不動産を相続したことを知った』場合は、来年4月1日から3年以内、つまり2027年3月31日までに相続登記をしなければならないということです。
【住】来年4月1日以降の相続だけでなく、4月1日以前、現時点の相続も義務の対象になるのですね。
もし、相続登記しなかった場合はどうなるのですか?
【平】正当な理由がないのにもかかわらず、期限内に登記をしなかった場合は『10万円以下の過料』が科せられることになります。
背景には“所有者不明の土地・家屋の増加”
【住】そもそも相続というのは、その家族間の内輪の話という風に思えるのですが、なぜ義務化されることになったのですか?
【平】はい。これは相続登記がされていない、すなわち『所有者不明の土地』が災害の復興の妨げになるケースが相次いだからなんです。
長崎地方法務局の担当者に詳しい話を伺いました。

長崎地方法務局 平野孝敏首席 登記官:
近年、相続登記がされてないことによって、土地の現在の所有者が登記記録を見てもわからない『所有者不明土地問題』が顕在化していることが一つ社会問題化していると。
これによって、災害における復旧、復興作業がままならない、遅々として進まないことが問題視され『相続登記の申請の義務化』といった法整備の契機となっているところでございます。
【住】『災害からの復興』を図るためには最新の登記が必要なんですね。
【平】はい。また『街の再開発』を行う場合も、1か所でも所有者が分からないと、計画がとん挫し、街の発展を阻害するということにもなりかねません。
【住】実際『所有者不明の土地』というのは、どのくらいあるものなのですか?
2016年には九州よりも広い土地の所有者が不明に
【平】国土交通省によりますと、2016年の所有者不明土地の面積はおよそ410万ヘクタールということです。九州の面積がおよそ368万ヘクタールですから、九州よりも広い土地が所有者不明の土地になっています。
そして、このまま何の措置も取られないと、2040年には720万ヘクタールになると推定されています。これは九州ほぼ2個分になります。

【住】このままの状態が続けば、かなり深刻な状態になるのですね。

【平】長崎市のことになりますが、市は『所有者不明土地』の数を今のところ把握できていませんが『空き家』の数は市内に9,300戸あり、年々増えているとしています。