外出は「1時間の散髪」だけ。削られていく心身

男の姿が見えないと、妻は探し回った。
2025年1月以降、男が1人で外出したのは"散髪"のための1時間だけだったという。
被告の男:
「その際、妻は運よく家にいてくれた」
「妻の介護のためアパートから実家に引っ越すことも検討していた。でも妻の自分への依存度が高すぎるせいで行動を起こす時間がないことがストレスだった」
認知症の進行を和らげられないかと、男は妻と一緒に小学2年生の算数と国語のドリルをやっていたという。
介護疲れは次第に心身をむしばみ、脱力、食欲不振、不眠などの症状で苦しむようになった。2週間で体重は5キロ落ちた。
長女の手配で、男を休ませるために、認知症が進む妻を脳神経外科に入院させることになった。いわゆるレスパイト入院(介護者の休息のための入院)だ。
しかし2週間の入院中も、男の頭の中は退院後の生活への不安が支配し続けた。
腰の圧迫骨折で入院していた母親の退院の期限も迫っていた。
母親を施設に入所させるためには面接に行かないといけない。
でもそこに妻を連れて行けば、まともに決められない…。
入所施設が決まらなければ探し直さなければならない…。
4月3日、妻が退院。再び始まった24時間の「W介護」生活。
そして事件は起きた。








