4人に1人が刑務所に戻ってくる
モデル事業導入の背景には、知的障がいのある受刑者が出所後再び罪を犯して入所する「再入率の高さ」があげられます。
矯正局特別調査の速報値では、知的障がいがある人の2年以内の再入率は、出所者全体が13%であるのに対し、知的障がい者は25.8%とおよそ2倍(2022年)。4人に1人が刑務所に戻ってきているのです。

長崎刑務所のモデル事業対象者33人で見ると、入所回数は平均5.5回。最高12回。9割が窃盗の罪で入所しています。(2024年10月末現在)
知的障がいを持つ人の方は再犯に至るまでの期間が比較的短く、刑事施設への入所回数が多い傾向にあることもみえてきています。再犯防止を個人の力だけに任せることへの限界と、社会復帰に導く専門的な知識やノウハウの必要性が浮かび上がっているのです。
社会復帰へのコース
長崎刑務所の支援モデル事業では、入所時に面接などで受刑者の特性を確認、支援計画を作ってコースに振り分けます。
コースは3つ。
①ビジネスサポートコース…一般的な就労を目指すためビジネスマナーなどを学ぶ
・ビジネスマナー指導
・刑務作業におけるジョブトレーニング
②福祉的就労コース…出所後に福祉施設で働くことを目指す
・農園芸作業A
・体感協調プログラムA(和太鼓)
③福祉サービス利用コース…出所後に福祉サービスを利用する人のため
・農園芸作業B
・体感協調プログラムB(和太鼓)
・感情表現プログラム(絵画)

各コースのプログラムでは農園芸作業を行ったり、協調性を養うために複数人で和太鼓の演奏するほか、全員が対人スキルアップの学習や犯罪防止学習などのプログラムを受講します。
さらに出所後を見据えての就労支援や帰省先の確保、福祉サービス利用のための助言といったサポートも行われます。

長崎刑務所の通常の受刑者は
午前6時40分…起床
午前7時50分~午後4時55分…刑務作業(休憩・昼食も)
一方でモデル事業の対象受刑者(例)
午前6時40分…起床
午前…刑務作業
午後…プログラム受講