9月9日は五節句のひとつ、「重陽の節句」です。菊の花を飾るなどして無病息災や長寿を願うもので「菊の節句」とも呼ばれますが、その菊の花に注目します。

「菊」というと、葬式やお供え物を思い浮かべる人も多いかもしれませんが、そんなイメージを変えようと、いま生産者が奮闘しているんです。さまざまな種類の菊を栽培しているえびの市の農家を取材しました。

インパクトのある品種を

えびの市にあるビニールハウス。ここで菊の花を栽培しているのは農家の稲田万智さんです。


(菊農家・稲田万智さん)「現実使ってもらうんだったら、それに負けないインパクトのある品種を作らないといけない」

そんな思いで菊を年間およそ40万本生産している稲田さん。

ハウスに植えられている菊の品種はなんと50種類を超えています。


(稲田万智さん)「普通の菊、小菊類の時代にたまたま作ってみればともらって、そこから面白いなと思って、洋花としてアレンジとして使えるんじゃないかということで、アレンジで使うんだったら、ほかの洋花みたいにたくさん品種があったほうがいいなということで、少しずつ増やしていって」

葬式や供え物で使う「仏花」としてのイメージを持つ人も多い、菊の花。


実は、花の色や大きさの種類は非常に豊富で特に、欧米で品種改良された「洋菊」は「マム」と呼ばれて親しまれていて、ここ数年、日本でも人気が高まっています。

稲田さんもさまざまな種類の「マム」を育てていて、「アナスタシア」という品種は細い花びらがまっすぐ伸びているのが特徴です。


(稲田万智さん)「やっぱり大きな花もいいんですけど、こういうシャープなやつとか、まだ花弁が細くてシュッとしているので、小柄なんですけど、アレンジのアクセントにはなるかなと」

一方、こちらのマムは美しい赤色が目を引きます。


(記者)「赤いのも菊なんですね」

(稲田万智さん)「種苗業者にバラみたいな赤の菊がほしいと前から言っていて、なかなか品種がないんだけど、アレンジするとなったら強い赤の品種がやっぱりほしいよねと思いながらいろいろ試験して、検討をしているところ」

また、稲田さんは染料を使って菊の花を染める方法も考案。


アレンジの幅が広がるようにと挑戦を続けています。

(稲田万智さん)「根元から染料を吸わせているんですけど、菊の場合ひと手間かかるので、どう染めるかは秘密にしています」

(記者)「菊は難しさがある?」

(稲田万智さん)「時間もかかるし、湿度とか温度でも吸い方が変わっちゃうので、手順が悪かったら色も乗らなかったり、なかなか芯まで色を乗せるというのはちょっと難しい」

長年、こだわりを持って菊を育ててきた稲田さん。


「仏花」としてだけではない菊の魅力を多くの人に知ってほしいと意気込みます。

(稲田万智さん)「まずはその常識を変えていこうというので、やっぱり市場なり花屋さんに提案をしてきたところ。いろんな花屋の協力もあって、菊も普通のアレンジとして使ってもらえる状況になってきたので、これからも新しい品種なり、チャレンジして、もっと色んな人に使ってもらえればと、努力できればと思います」

少しずつイメージが変わりつつある菊の花。

これからは日々のさまざまなシーンに彩を添えてくれそうです。