「今日はこれ目当てで…」出張朝市に訪れた人からは応援の声
地震で店舗が焼け落ち商いの場を失った家族はこの1年、同じ境遇の仲間と共に出張輪島朝市に参加し、全国を飛び回った。
今月13日、翼音さんの父・鷹也さんと祖母・悦子さんは、愛知県豊田市で開かれた出張輪島朝市で、出店の準備をしていた。並べられたのは輪島塗の箸や器、フクロウのカップ。そのそばには出張朝市に必ず持っていくという翼音さんの写真を置いた。
鷹也さんも翼音さんが亡くなって以降、かつて店を切り盛りしていた悦子さんに習いながら店に立つようになった。
この日、店を訪れた男性がすぐさまフクロウのカップを手に取り、鷹也さんに話しかけた。

「今日はこれ目当てで…ずっとお待ちしていました。愛知県に来てくれるのを」
愛知県半田市から訪れたという男性は、事故で親を亡くした経験から突然、大切な人がいなくなる辛さを分かっていた。こんなに若く、将来がある子がどうしてと、翼音さんのニュース見るたび一人で涙を流したという。翼音さんと祖父で作ったカップがあると知り、出張朝市の出店情報をスマートフォンのホーム画面に追加し、付近で出店がないかいつもチェックしていた。
ずっと気にかけていたことを2人に伝え、フクロウのカップを購入した。
「翼音さんの写真を見た瞬間は涙が出てきてしまって。お客さんもいっぱいで、みんな忘れていないんだなという気持ちでうれしかったです。カップは家で飾りたいです。いつもフクロウが見えるようにして飾りたいですね」