「忘れられなかった」朝市に訪れた翼音さんと同年代の子を持つ夫婦

三重県鈴鹿市から訪れた40代の夫婦は、カップの底に描かれた「Hanon」の文字をじっと見つめていた。

夫婦の娘は翼音さんと同じ年で、豪雨の日の9月21日が誕生日だったという。夫婦は瞳に涙を溜めながら2人に伝えた。

「『上下長袖を着て』という事を聞いてくれてたじゃないですか。あれ聞いてうちの子とそっくりなんですよ性格が。表には出さないし、言う事も聞いてくれないけど、そういうところだけちゃんと言う事を聞いてくれるところが本当似とるなあと思って。忘れられなかったんです。陰ながらずっと見守っていました」

祖母の悦子さんと話す夫婦(今年9月、愛知・豊田市)

夫婦は娘の分と合わせ家族3人分のフクロウのカップを購入していった。

豪雨のあと100日以上、店に立ち続けてきた祖母の悦子さん。

「みなさんに気にかけていただいています。支えてもらっているので、頑張ろうと思えます」

悦子さんの発案で、フクロウのカップには一通の手紙が添えられている。

「このカップは祖父が描いていて、翼音がこうしたら良いなぁと出来たカップです。このカップを見て災害があったことを思い出し、この死を無駄にせず自分たちにできる備えをしてほしいと思います」

悦子さんがフクロウのカップに添えている手紙