石川県で2023年7月12日に発生した初の「線状降水帯」。川の氾濫が相次いだ津幡町では、避難指示が間に合わず、住民が濁流に飲まれた集落に取り残される事態になりました。
未曾有の水害から1年。自宅が床上まで水に浸かった津幡町の住民や、当時町役場で対応に当たった職員に話を聞くと、避難の難しさが見えてきました。
床上浸水なんて「夢にも思わなかった」
「大丈夫大丈夫、水が上がってもここまでだ、と思っていたが、5分もたたないうちにわーっと入ってきた。恐怖しかなかった」

石川県津幡町に住む中村マサ子さん(76)。7月12日の夜、夫と50代の長男夫婦と4人で自宅で過ごしていました。初めは「ただ雨が降っている」程度に思っていましたが、その雨がなかなかやまず、次第に降り方が激しくなっていきました。

中村さんの自宅前には、県道を挟んで「能瀬川」と呼ばれる小さな川が流れています。自宅は築60年近く経ちますが、一度だけ床下が水に浸かった以外は、川があふれたことはありませんでした。
この日、夕食をとって、いつものように家族4人で過ごしていた中村さん。能瀬川の水位は上がり続け、午後10時ごろになると、橋の欄干に差し掛かり、ついに道路に溢れ始めます。しかしこの段階になっても、中村さんは自宅が床上まで浸水するとは思いもよらなかったといいます。
中村さん
「夢にも思わなかった。あんなすごい災害は初めて遭ったし、ひとごとみたいに今までテレビで見ていた」