谷内さんの豆腐を待ちわびていたのは、能登の住民だけではありません。
「毎週買ってくれとったから、絶対心配しとるわと思って」
「ありがと、ありがと。元気な顔見れて嬉しい。よかった」

2年前から始めた、金沢での移動販売。週に4日、市内の6か所をまわります。
金沢の常連客
「揚げがないんやなあ」
「来週には厚揚げは持ってこれるかな」
「ゆっくりでいいから。ゆっくり来てや」

インターホンで呼びかけるスタッフ
「こんにちは、谷内のお豆腐です。ご無沙汰しております」
金沢エリアを担当するのは、谷内さんの義理の姉・水上江利華さん。自身も能登町の実家が被災しました。今年はじめて顔を合わせた住民たちからは、安堵の表情が見えます。なかには輪島出身の客の姿も。
金沢の常連客(輪島出身)
「お豆腐と大好きなおからドーナツを。輪島の人間なんで、輪島のお水、豆腐が美味しいので。懐かしいお味しますよ」

祖父の代から続く、豆腐の移動販売。特に高齢化が進む地域では、自力での移動が難しいお年寄りにとって救世主のような存在でもありました。一方、奥能登では人手が足りず、移動販売を再開できないままです。
谷内さん
「ひとつのお宅に行くと、そこに人が集まるという文化があった。それと同じように近所の人が声をかけあって集まってくれていたので、そういうコミュニティをまた作れたらいいなと」
発災から3か月。2次避難などでふるさとを離れてしまった人も多く、まちには倒壊した家屋の瓦礫が残されたままです。

谷内さん
「地震で避難している方や能登に帰りたくても戻れない人にとっての『復興』はとても大事。自分ができることをして、能登に戻ってくる人が1人でも増えればいい」

半世紀以上変わらぬ豆腐の味で、復興の後押しを。住民たちの帰りを待ち望みながら、谷内さんはきょうも豆腐作りに精を出します。