
グロテスクな描写とともに、その技法も、人々に強烈な印象を与えた。大胆な構図と、白と黒のコントラストは、今なお、世界中の画家やデザイナーに影響を及ぼしているという。
▼高知県立美術館 栁澤宏美 学芸員
「サロメの服を曲線で大胆に描き、白と黒で分割しつつ、直線で家具を描く。リズミカルな動きが、デザインとしてもすごく美しい」
王女サロメが、ヨカナーンの首を手に入れ歓喜に浸るシーンを描いた作品「クライマックス」(1893年)は、ビアズリーの代表作となった。

絵の中で王女サロメは、ヨカナーンの首を両手で持ちながら不気味に微笑んでいる。まるで、こんなサロメの声が聞こえてくるようだ。
「お前の口にくちづけしたよ、ヨカナーン。お前の唇は苦い味がした。これは血の味かしら。いや、きっと愛の味よ」
ヨカナーンの首からは血が滴り落ちて水面のようになり、そこからは花が咲いている。絵をよく見ると、サロメの髪の毛の周りには細かい“点描”が施されている。現代でいう“オーラ”だ。
▼高知県立美術館 栁澤宏美 学芸員
「現代の少女漫画も『点描』で表現するが、そういったところにもビアズリーは影響を与えている。『切られた首』というグロテスクなモチーフだが、今の時代にポスターやチラシにしても目が離せなくなるのは、やっぱり『美しさ』があるから」










