小規模な醸造所で作られ醸造家のこだわりが詰まったクラフトビール。
高知県四万十市の新たな醸造所でビールが完成しこのほど、地元の人達にお披露目されました。個性豊かな味わいや香り。夫婦の思いがこもったクラフトビールは、人々に笑顔も提供していました。
「カンパーイ」

笑顔で談笑する人々が手にしているのは、四万十市で製造されたクラフトビール。幡多地域で初めて誕生しました。

造ったのは、岡林孝典さんと明子さんの夫婦。ビールとともに楽しい空間を提供したいという岡林さんたちの挑戦です。
四万十市の中心街、天神橋商店街の近くに岡林さん夫婦の醸造所はあります。2人の趣味はサーフィン。いい波を求めて四万十市を訪れるようになり、2016年2月、地域の魅力に惹かれて移住を決断しました。移住後はそれぞれ、四万十市内で会社員として働いていたということですが…
(SHIMANTO Brewing 岡林明子さん)
「ビールが好きだから色んな情報を得るうちに、自分でつくってみたいというすごく強い気持ちがあって。(夫の孝典さんも)モノづくりの仕事がしたいとずっと言っていたので、一緒に二人でできる仕事ということもあって、思い切って決めました」
店舗はサーフィン仲間でもある大家さんから借りました。元々は酒店。外観を残して改装し2025年1月、クラフトビールを提供するタップルーム「SHIMANTO Brewing」をオープンしました。

ただ、この時点では、この場での醸造が可能となる「酒類の製造免許」がおりておらず、2人は県外の醸造所の設備を利用しながら、オリジナルのレシピで仕込んだクラフトビールを提供してきました。

(SHIMANTO Brewing 岡林明子さん)
「(Q.苦労したことは?)膨大な書類を準備することですね。あと、計算が細かいので何回もやり直ししました。(2024年)12月に書類を出して交付されたのが10月なので、(税務署へ)最初の相談から1年かかったことになります」
待ちにまった「酒類の製造免許」がおり、初仕込みとなった、この日。福岡でクラフトビールの製造や設備販売、そしてビールづくりのアドバイスを行っている藤戸淳平さんが応援に駆けつけてくれました。

二人にとって信頼できる、師匠のような存在だと言います。
ビールを製造するにはまず、大麦を水に浸して発芽させたあと乾燥して作られた麦芽を、機械で粉砕していきます。

この粉砕した麦芽を醸造タンクに溜めた60度ほどの湯に入れて撹拌させることで、麦芽に含まれるデンプンが酵素の働きで糖分に変わるといいます。

(Story Agent 藤戸淳平 代表取締役醸造長)
「酵素とデンプンがうまく作用するようになるので、混ぜる作業はすごく大変ですけど一番大事だと思います」
測定器を使って糖度を確認しながら慎重に作業を進めます。

(Story Agent 藤戸淳平 代表取締役醸造長)
「これがアルコールの度数の基になる数字となります。糖分を酵母が食べて、どんどん今作っている糖が減っていくんで、その差分でアルコール度数が決まるっていう感じですね」
お湯を加えながらさらにかき混ぜていき、糖化が進むと室内には甘い香りが漂ってきます。

(記者)
「ほんとに良いにおいしてましたね」
(SHIMANTO Brewing 岡林孝典さん)
「でしょ。あまい、良い匂いがするでしょ。これがビール造りの楽しいところというか」
狙った糖度になるとタンクの温度をあげ酵素の動きを止めます。
そして、バスケットをウィンチで引き上げて麦芽を濾し、取り出した麦汁にビールの香りや苦味を決める重要な役割・ホップを加えます。

(SHIMANTO Brewing 岡林明子さん)
「柑橘系のホップが効いたアメリカンペールエールを仕込んでいます。自分たちがクラフトビールにはまった味がアメリカンペールエールだったので、それを一番最初に作りたいなと思ってレシピを考えてきた」
作業開始からおよそ10時間、タンクの温度が20度ほどまで下がるのを待って酵母を投入しました。
これからのおよそ4週間、糖分を食べてアルコールと炭酸に分解する酵母の働きに注意しながら温度を調整するなどしてクラフトビールを完成させます。

(SHIMANTO Brewing 岡林孝典さん)
「免許を取ることがほんとに大変だったんですけど、やっとファーストバッチができることになりまして、良いものができたと思います」
初めて醸造された銘柄のビールを、「ファーストバッチ」と呼びます。

この日は、お披露目会。四万十市で人気のハンバーガーも合わせて出店し、出来立てのビールとハンバーガーを目当てに開店前から大勢の人が列を作りました。

「カンパーイ」

「うわ。おいしい」

「めちゃくちゃ楽しみにしてました。中村で初めて醸造されたビール。一番に飲みたかったです」
夕方になりある男性がお祝いをもって訪れました。製造免許がおりるまえ、店の開店時から通ってくれている常連さんです。

(常連客)
「おいしいです。かなり待ちましたので。紆余曲折も知っていますし、苦労しているのも知っているので、余計に感慨深いです。(Q.クラフトビールの魅力は?)樽によって味が違ったりだとかするんで変化もあるし、大量生産では味わえないような。決められた同じレシピで作っても、水が違えばこれだけ味が違うとか」
岡林さん夫婦の醸造所の誕生で、県内でのクラフトビール醸造所は7か所になりました。たくさんのお客さんに来てもらった2日間、充実したお披露目会になったと2人は話します。
(SHIMANTO Brewing 岡林明子さん)
「ビールを飲みながら、皆で楽しく過ごせる空間を提供していきたいし、それが自分たちのやることの意味かなと思っているので、昨日と今日でお客さんが良い反応をしてくださって、とても手応えがありました。これから頑張って、この場所を提供し続けるように、お客さんにさらに喜んでもらえるように頑張っていきたいなと思っています。
出来立ての個性豊かなクラフトビール。カウンターをはさんだ立ち飲みスタイルの店内は岡林さんたちが願う楽しい空間が広がっていました。
地元の人たちに喜んでもらえる場所をこれからも目指して。夫婦の挑戦は続きます。










