■RADWINPSとの3度目タッグで生まれた 主題歌『カナタハルカ』
滝香織アナウンサー
「RADWIMPSさんとの3度目のタッグで作られた、主題歌の『カナタハルカ』はすごくピュアな恋の思いを描いた胸を打つ作品だと思います。この楽曲にはどんな思い入れがあるんでしょうか?」
新海誠監督
「今回、RADWINPSの野田洋次郎さんと再びタッグを組むことになって話したのは、お互いに『前作までとは違うことをやりたい』ということでした。その1つが、もう1人音楽家を入れましょうと。映画館で聞くための音楽として、自分たちには無いノウハウで音響設計ができる人に入って欲しいという話をして。そこでハリウッドで活躍している陣内一真(じんのうちかずま)さんに参加していただきました。劇中でかかるBGMに関してもすごく陣内さんに広げていただいたんですね。もう劇場でしか聞けないような音の設計を存分にしてもらいました」
■作品を象徴する楽曲『すずめ』 曲が脚本への刺激になることも
新海誠監督
「それとは別にRADWIMPSが作る主題歌が2曲あるわけです。最初に作っていただいたのが『すずめ』という楽曲なんですけれども。この曲は、洋次郎さんの声ではなく女性の歌い手を見つけようという話も最初にしました。この作品は、少女の成長物語でもありますので、やっぱり女性のボーカルがいいだろうと。1年ほどかけてTikTokで歌を披露している十明(とあか)さんという方を探し当てて、彼女に歌ってもらいました。
洋次郎さんと最初に話し合ったのが、もう1つ。土や風の匂いがするようなメロディーを探してほしいという話をした覚えがあります。『すずめの戸締まり』って土地を巡っていく話で、土地というのは『土』のことですから。作中に『ミミズ』という現象も出てくるんですけど、ミミズも土を作る生き物ですし。とにかく土の感触のあるような音が欲しいですという話をして、そこで生まれてきたのが、『すずめ』という楽曲のメロディーですね」
滝香織アナウンサー
「曲が生まれることで物語がまた育っていくような、RADWIMPSさんや陣内さんとの相乗効果はあるんですか?」
新海誠監督
「たくさんあります。例えば脚本を書いた時に、まず洋次郎さんに読んでいただくんですね。読んでもらった上で4曲か5曲上がってきたんです。でも、使われているボーカル曲は2曲だけじゃないですか。映画に使われていないボーカル曲が何曲もあるんですけど、その1曲1曲が映画の形を変えてくれていると思います。映画の中で使われなかったとしても、そこには洋次郎さんが脚本を読んだ時、最初に感じた感想がギュッと入っているんですよね。なので、その歌詞を読んで、メロディーを聞いて脚本を直したりしたんですよ」
滝香織アナウンサー
「世に出ていない曲もあるって贅沢ですね」
新海誠監督
「いや本当に、こんな特別な作り方をさせてくれるのは、洋次郎さんだからこそだと思います(笑)」
