現在、全国公開中の映画『すずめの戸締まり』。作中の舞台の1つとして、愛媛がモデルの土地が登場することでも話題となっている。このほど愛媛を訪れた新海誠監督に、作品に込めた思い、そして愛媛を描いた理由を聞いた。

■“場所を悼む”という発想から生まれた作品のテーマ

滝香織アナウンサー
「今回『すずめの戸締り』というタイトルで、扉を閉めることで災いから守るという物語ですが、この“戸締まり”という発想はどこから生まれたんですか?」
新海誠監督
「最初は日本全国を舞台にワクワクと新しい場所を訪れるような冒険物語にしたいと思ったんです。でもそういう物語やろうとした時に、どうしても今の日本は人口が減って、経済的にもどんどん小さくなっているということがあって。かつてこの場所はこんなに賑やかだったけど、今は寂しい場所になってしまったと。であれば、いっそのこと廃墟を巡る物語にして、かつてそこに住んでいたであろう人たちのことをヒロインが想像する話にしようと思ったんです。その場所を“悼む”というか。その中で、アニメーションのアクションとして何ができるかと考えた時に、バタンと扉を閉じて次の場所に行く“戸締まり”という発想に至ったんです」
滝香織アナウンサー
「人を悼むことはありますけど、“場所を悼む”のはなかなか・・・」
新海誠監督
「なかなか無いですよね。いつの間にか人が来なくなって無くなってしまった遊園地とか、あるいは災害で人が住めなくなってしまったエリアは日本にたくさんある。でも、その場所ができる時はきっと未来の憧れとか、賑やかな感情があったはずなのに、場所が終わっていく時って結構寂しいんだなと思うことが多くて。であれば、その場所を悼みながら旅して回るようなキャラクターを今の日本で描くと、ちょっと面白い映画になるかなと考えました」