■コロナ禍で薄れゆく「震災の記憶」

滝香織アナウンサー
「世界は今『コロナ禍』という災いに直面しています。コロナは監督の作品作りに影響はありましたか?」
新海誠監督
「そうですね、影響はあったと思います。ただ、制作中にコロナ禍が起きたことで最初に思ったのは、その前にあった巨大な災害が人々から忘れられちゃうんじゃないかということでした。今の10代にとって一番人生を変えてしまう大きな災害が『コロナ』なので。でも、それより前には日本を揺るがすような、東日本大震災を含めて、もっと大きな災害もいくつかあったわけじゃないですか。それが押し出されてしまうんじゃないかとも感じました」

■エンタメを通してだからこそ伝えられる思い

滝香織アナウンサー
「監督は東日本大震災が作品作りの大きな原動力になっていると度々おっしゃっています。やはり、震災を機に監督の中で何かが変わったんでしょうか?」
新海誠監督
「変わったと思います。僕自身は被災者ではなかったんですけれども、震災以降、エンタメ映画を作っていることへの後ろめたさのようなものがずっとあって。世の中に絶対無ければならない仕事ではないじゃないですか。でも、自分の仕事としてはこういうことしかできないし。せめてエンタメにしかできない“役割”みたいなものを見つけることができればいいなと、2011年に強く思ったのを覚えています。そんなことを考えながら『君の名は。』や『天気の子』を作ってきて。エンタメを通してだからこそ考えることができる災害への気持ちみたいなものを、ずっと映画の中で扱ってきたつもりです。『すずめの戸締まり』も、震災以降そういう気持ちの連続感の果てに作った映画のような気はします」