新型コロナウイルスの影響で苦しい状況が続いている新潟県阿賀野市の焼き鳥店に、店の名物を売る自動販売機が設置されましたが、設置したのは店主ではなく、とある男性。なんと、自費で自販機を設置したそうです。

36年の歴史を持つ、阿賀野市の焼き鳥店『いち藤』を取材しました。

肉の鮮度と絶妙な焼き加減にこだわった串焼きが人気のお店です。

そんな「いち藤」の店先に先月、自動販売機が設置されました。
販売しているのは、これまでお土産用として店内で販売していた冷凍のモツ煮です。


【やきとり いち藤 根本美佐子さん】
「うちの冷凍もつ煮込み

半日かけて煮込んだ、柔らか~いモツ煮は『いち藤』の人気メニューです。


さまざまな食感が楽しめるようにと、新潟県内産の4種類のモツを使い、仕入れたその日に調理。鮮度抜群で臭みがなく、スープまで美味しく飲めるのが特徴です。


【お客さん】
「おいしいですね、絶対頼んでますね、毎回」

【小黒崇行さん】
「口に入れた瞬間すごく柔らかいです、臭みがなくて、あっという間に口の中で溶けていきます」


この自動販売機を購入して設置したのは、阿賀野市の小黒崇行(おぐろ・たかゆき)さんです。本業はパソコンのトラブルへの対応やホームページの作成などを請け負う仕事です。

『いち藤』との縁は1年前に遡ります。

【小黒崇行さん】
「もともとお客さんで来ていて、クラウドファンディングをしたいと相談を受けたきっかけがあって…」

去年2月に店主の佐藤孔一(さとう・こういち)さんは、新型コロナウイルス禍で落ち込んだ売り上げを立て直そうと、営業時間外でも気軽に買ってもらえる自販機の設置を目指しました。
小黒さんに依頼してクラウドファンディングを始め、設置費用を募ろうとしましたが…


【佐藤孔一さん】
「1,2週間後に血圧が上がって、200を超えたものですから…。それで中断して」


体調を崩して、やむなく断念。その後も店は厳しい状況が続きました。


【佐藤孔一さん】
「営業的には、全然駄目です。全然駄目ですね。新型ウイルス禍前の半分以下には落ちている」


そこで動いたのが小黒さんでした。


【小黒崇行さん】
「私が冷凍自販機を設置するので『そこでいち藤の商品を販売しましせんか』と」

設置費込みで150万円ほどする自販機を自ら購入したのです。

小黒さんがそこまでする理由とは…?

【小黒崇行さん】
「もつ煮込みでは全国で有名な群馬県の『永井食堂』に引けを取らない味を、『いち藤』さんはお持ちだと思う。なのでこの味をもっと広めたい」

【佐藤孔一さん】
「もう感謝の一言なんです。とても一人の力ではできなかったので、皆さん協力していただいて感謝に堪えません」


自販機は半月で10万円ほどの売り上げがあり、まずまずの滑り出し。さらに先月には、より多くの人にモツ煮を買ってもらえるよう、小黒さんは通販サイトも立ち上げました。


【佐藤孔一さん】
「自動販売機で少しでも挽回ができればいいかなという考えで…。お客さんに『美味しかったな』と言ってもらったり、明日のエネルギーが出れば、それに越したことはないです」


苦境が続く中、家族で36年続けてきた店と自慢の味を守るため、前を向く佐藤さん。

力強い後押しを受けて『いち藤』の奮闘は続きます。