世界遺産に登録されるには原則、世界遺産委員会を構成する21か国の全会一致が必要です。インドで7月に開かれる世界遺産委員会には、韓国も委員国として入っていて、韓国の主張に対して日本がどう対応するかが登録可否の鍵となりそうです。

【世界遺産委員会・松浦晃一郎元議長】
「”佐渡島の金山”の方々がどういう厳しい状況の下で、働かされたかということはしっかり、かつ正直に”説明”する必要があると思います」

この”歴史の表示”をめぐっては、2015年に登録された世界遺産「明治日本の産業革命遺産」でも同様の対立が起きていました。

【韓国外務省・キム・インチョル報道官(当時)】「(日本政府が)約束した内容を履行しなかったことは明らかです」

長崎県の端島の通称・軍艦島など、23の資産からなる「明治日本の産業革命遺産」について韓国政府は、日本の植民地支配時代に、6万人近くの朝鮮半島出身者が23のうち7つの施設で、強制労働をさせられたと主張しました。

日本政府は2015年の世界遺産委員会で強制労働の事実を認め、その後、当時の徴用政策について理解を深めていくため、「産業遺産情報センター」を東京に開設しました。
しかし、一部の展示内容について、韓国政府は強制労働を否定するもので「歴史的な事実を完全に歪曲している」と日本に強く抗議していたのです。

世界遺産委員会はこれを受け、2021年に採択した決議文書に”歴史の表示”に関する記述を新たに加えました。その内容とは「遺跡の価値が認められる期間以外も含む全ての歴史”フルヒストリー”の説明を求める」というものでした。

世界遺産委員会の元議長を務めた松浦晃一郎さんはこの決議文書が「佐渡島の金山」の登録に影響を与えるのではないかと懸念を示しています。

【世界遺産委員会・松浦晃一郎元議長】
「世界遺産委員会も受け入れて、”フルヒストリー”をしっかり説明してほしいということになっているわけで、それに対して日本はしっかり対応する必要があると思います」