◆裁判の型式を借りた報復

金井弁護士の意見書(国立公文書館所蔵)

(石垣島事件の判決関する意見)
問題は、この犯行が如何なる状況の下に行われたか、何人により提案、決定され、何人によって行われたか。(搭乗員を)殴った者は如何なる事情で、如何なる心意を以て、殴るに至ったのか。又、各関係者の責任の有無程度は、如何であらねばならぬのかという点にある。

本事件の判決は、昭和23年(1948年)3月16日言い渡されたが、それによると、45名(他に1名起訴されているが病気の為分離)うち2名は無罪、2名は重労働(1名20年、1名5年)となったが、他の41名は絞首刑であった。それは無罪者2名を除けば、検察官の主張が全面的に認められ、被告人自身の公判までにおける自由意志に基づく供述、及び、これに基づく弁護人の主張は、全く無視されたことを意味する。

結果から見れば約3ヶ月半に亘る審理は、ほとんど無かったに等しい。我々としては、被告人及びその家族と共に、色々な点でこの裁判には到底納得することができない。それは裁判ではなく、裁判の型式を借りた報復であると考えられてもやむを得ないもので、米軍の軍事裁判の権威及び名誉の為にも十分検討されねばならぬと考える。

◆事実を誤認され、重刑に

石垣島事件の横浜軍事法廷(米国立公文書館所蔵 髙澤弘明氏提供)

金井弁護士は、裁判には到底納得できないとし、「裁判の型式を借りた報復である」と強く非難している。このあとも項目を分けて指摘が続く。

(石垣島事件の判決関する意見)
1,認定について
(イ)実際に於いて、自ら犯行を担当していない者で、犯行者として事実を誤認せられ、重刑に処せられた者が十数名いる。彼らは無実の罪に問われ、家族と共に悲嘆に暮れている。いやしくも裁判である以上、一人でも無実の罪で泣かしてはならない。