迷わず実名を選択するも“名前が持つ重み”に…

藤森キャスター:
様々な議論がある中で、匿名での審理を選んだ遺族の弁護士は、「国民の『知る権利』」というが、被害者の『知られたくない権利』もある。落ち度もなく殺されてしまった人が、さらし者のようになってしまうのは違うのでは。事件の中身は公開すべきだが、人の情報についてはもっと考えるべき」と話していました。

トラウデン直美さん:
裁判という場での常識について私はあまりよくわかっていないんですが、街の声にもあったように、やはり個別でご遺族の方の思いや、被害者の方との関係だったり、被告に対する考え方などは、おそらく全部違うので、そういった個別のケースに向き合える匿名という選択肢があるという現状は、被害者の方に寄り添うことになるのではないかというふうには感じますね。

藤森キャスター:
一方で、匿名での審理に懸念の声を上げている方もいらっしゃいます。ジャーナリストの江川紹子さんらは、“安易に匿名措置としないこと”などを求める要望書を京都地裁に提出しています。その上で、江川さんは「被害者になったことが、その方の名誉を損なうものでは全くない。秘匿決定はできる限り、抑制的であるべきで、厳格に考えるべき」だと話します。

さらに、「誰が被害者で、どのような人だったかを知ることは、社会が犯罪を理解し、裁判の妥当性を理解・検証する上で不可欠の情報」としているんです。

小川キャスター:
今回、この裁判で実名での審理を選んだご遺族の方もいらっしゃる。その1人である寺脇さんは、どんなことをおっしゃっていましたか?

MBS 國土愛珠 記者:
寺脇さんは、裁判が始まる前は迷わず実名を選択されたというふうにおっしゃってました。ただ一方で、裁判で初めて“名前が持つ重み”というものを感じたみたいで、「実名を選んだことで苦しかった、あまりにも安易に実名審理を選んでしまったのではないか」という葛藤もあると話していました。