世界トップ選手たちから学べるタンブルウィードTC

サニブラウンが所属するタンブルウィードTCはアメリカフロリダ州を拠点とするチーム。同地は温暖な気候で知られ「冬でも陽射しがあれば半袖短パンにもなれる」という。1年中屋外で走ることができるのは大きなメリットだ。
東京五輪男子200m金メダルのアンドレ・ドグラス(27・カナダ/自己記録19秒62)や19年世界陸上200m4位のアダム・ジェミリ(28・イギリス/19秒97)、今年6月の全米選手権100m2位のマーヴィン・ブレイシー(28・アメリカ/9秒85)と3位のトレイヴォン・ブロメル(27・アメリカ/9秒76)ら、スプリンターの宝庫といえるチームである。コーチのラナ・レーダー氏は高名な指導者で、男子三段跳で五輪&世界陸上金メダル6個のクリスチャン・テイラー(32・アメリカ/18m21=世界歴代2位)ら、世界のトップ選手を何人も育成してきた。
TBSが今シーズン前に現地で取材した際、サニブラウンは練習について以下のように話していた。
「アップが30種類くらいあって、ちょこちょこやばいメニューがあるんです。40分くらいアップして、サーキットみたいな感じではあるんですが、そこから何秒間走、みたいなのをやるんです。そういう冬期練習が一番キツいですね。(結果的に)基礎体力は付きますけどね」
チームメイトと一緒に練習することで、世界のトップレベルを常に体験できる。今回の日本選手権でも、隣のレーンの坂井隆一郎(24・大阪ガス)が10m通過を1.80秒で飛び出した。スタートが強いクリスチャン・コールマン(26・アメリカ)が、19年ドーハ世界陸上で金メダルを取ったときより0.01秒速かった。
「トレイヴォンやマーヴィンといつもやっているんで、焦りはしなかったです。出遅れたけど自分のリズムは刻めたので、後半にかけてスムーズに走ることができました」
サニブラウンはチームメイトたちに、どういうことを意識してスタートしているかなどを質問しているという。「人とリソース(資源、資産)が多いのがありがたいですね」
日本選手権で9秒97を出した19年よりも進化しているか、という質問にも次のように答えていた。
「10秒0台と9秒9台では体感的にはあまり変わりません。真の壁は9秒90かなって思います。練習でも9秒8台、7台の選手は全然違って、こういうところで差が出ているんだな、と毎日のように感じています。色んなことを質問して、学びながらやっているんで、1コンマ1コンマ、近づいて行きたい」
ただ、競技やトレーニングに対する自身の思いやスタンスが一番重要であることは、恵まれた環境だからこそ肝に銘じている。
「自分では気づかないうちに、キツかったら手を抜いてしまったりすることがあるんです。ブロックを使ったスタート練習もそうですし、持久系の練習もそうです。疲れているときこそフォームや走り方をちゃんとやらないといけないのに、精一杯走ってはいるのですがフォームが崩れたり。甘さが出ていると去年気づくことが多かったです」
自分の状態が良く試合でも好結果が出ていると、なかなか気づかない部分なのだろう。ヘルニアとその後遺症で苦しんだ20~21年シーズンは、無駄にはならなかった。