中国との関係悪化の影響は“新住民”候補にも…

台湾では、総統選と同じ日に、日本の国会議員にあたる立法委員の選挙も行われる。
民主主義を重視する台湾では、一定の議席を女性に割り当てる=クオータ制が長らくとられ、女性の立法委員は4割超えと、アジアトップを誇る。

立法委員選挙にのぞむ、李霞さん。実は、中国・福建省から台湾に移住した“新住民”だ。
台湾には結婚して中国から渡ってきた新住民が36万人いると言われ、戸籍を取得して10年たてば選挙にも立候補することができる。
李さんは台湾で長年、マイノリティーの権利向上や、多文化共生を訴えてきた活動が評価され、国民党の比例代表候補となった。
しかし、中国との関係悪化の中で、こうした中国出身の新住民の候補者に批判が向けられた。

共産党との関係など過去の経歴や台湾に対する忠誠心を疑う声が相次ぎ、立候補を取りやめる新住民も出た。
新住民の候補に対する批判をどう受け止めているのか。

国民党 中国・福建省から移住 李霞 立法委員候補
「台湾は民主化して30数年もたっているのに、このような制限や、権利をはく奪するような議論が過熱すべきではありません。選挙のたびに、もう一つの政党では反・中国の話題を利用します。私たちには見たくないものであって、悲しいことでもあります」
もともと台湾は第二次大戦後、中国大陸から渡ってきた人たちが統治した歴史があり、大陸にルーツのある人も少なくない。

国民党 李霞 立法委員候補
「台湾と中国の人々が交流し合い、信頼し合い、支え合うべきです。今のような関係は心が痛みます。わずか数年で対立が進んでしまいました」
この数年、台湾では中国に対する警戒心が、かつてないほど高まっている。その理由のひとつが香港の民主化運動に対する弾圧だ。

香港市民のデモに対する警察の暴力に、台湾の人々は中国政府の強権的な姿をみた。「今日の香港、明日の台湾」という言葉もささやかれた。
4年前、再選が危ぶまれていた蔡英文総統を勝利に導いたのは香港の混乱だった。
台湾の自由と民主主義を中国から守りきらなければならない。そんな思いで、台湾の新住民になった人もいる。

香港から移住した康駿銘さん。香港人の4人に1人が参加したと言われる大規模なデモ。康さんもこうした民主化デモに参加し、声を上げ続けてきた一人だった。
しかし、民主化を求める声を押さえ込もうとする故郷・香港の変化に危機感を抱き、2019年、台湾に移住した。
今回の選挙では、台湾独立を掲げる小政党の党員として活動している。

香港から移住 康駿銘さん
「中国の脅威を受けている香港と台湾の境遇はとても似ています。台湾が次の香港になって欲しくないので、民主と自由の尊さを伝えるべきだと思っています。失ってから後悔しても間に合いませんから」

この日、党が推す候補の応援に立った康さん。兵役も済ませ、将来は自らも立候補したいと話す。台湾の人たちの信頼を得るために、強い思いを発信し続けていきたいという。
――香港にいたとき、こういった政治活動をしたことはあった?
香港から移住 康駿銘さん
「ありません。台湾では政府に対する不満も遠慮なく言えます。中国と統一するという意見も、台湾独立の意見もどちらも許されます。これが自由な社会の尊さです」
(報道特集 2024年1月13日放送より)