残っていた「声」

「なぁ、もう悪さしねぇだろ」
「こんくらいすりゃあ」

現場にいた従業員が撮影した映像には、こう語る社長の男の声が残っていた。

論告でも、検察側と弁護側の意見は真っ向から対立した。検察側は「被害者に一方的に暴力をふるった末、燃料を用いて被害者を火だるまにしたものであり、その態様は、もはやリンチといえ、極めて残忍で悪質」として、懲役18年を求刑。一方、弁護側は「油が入っていたドラム缶などから、被告人の指紋が検出されず、物的証拠がない」と繰り返し無罪を主張した。

12月20日、静岡地方裁判所沼津支部は社長の男に懲役16年の実刑判決を言い渡した。「被告人が油をかけて火を放つ行為をしたものと認め、未必の殺意が認められる」と判断、裁判所が重要視したのは、当時現場にいた3人の従業員の供述だ。