イチロー3球連続柵越え 130mの場外弾も

フリーバッティングを始めて約5分、両翼100mの球場でイチロー氏がライトスタンドへ3球連続柵越えを見せた。あまりの衝撃に球児たちは無言。最後の打席はライトに張られた約20mのネットを超える推定飛距離130m弾。唖然とする部員たちから、バッティングに関する質問が次々出てきた。

部員:
バットは寝かせた方がいいですか?それとも、立たせた方がいいですか?

イチロー氏:それはどちらでも。楽に構えられる方でいい。僕は気持ちのいい所で構えてる。ただし、手は動かさない。下半身が動いてから手が動く。あくまでも下半身が大事。

部員:
体全体を使うにはどうしたらいいですか?

イチロー氏:
下半身主導で、最後に上半身がついてくる。下半身主導で力を伝えるのが大事。

フリーバッティング終了後、「内角を打つ時、脇が開いてしまう」との質問に「頑張れ!」と、笑顔で答えたイチロー。直後、真剣な表情で「でも、ホント頑張るしかないのよ、正しい形を探して、自分で見つけるしかないの。一瞬で劇的に変わることなんてないよ」と、イチ流アドバイスを贈った。

イチローから熱いメッセージ

イチロー氏:
可能性を感じました。僕は。想像してたよりレベルが高かった。ポテンシャルも高い。練習試合が難しいから、自分たちのレベルがどの程度か不安でしょ。でも、だいぶ高いよ、その自信は持っていい。

その中で自身の過去の行動を例に出して球児に語った。

練習後、部員たちに話すイチロー氏

イチロー氏:
高校の時、全然声を出さなかった。チーム内で一番声を出さなかった。黙々とプレーをしたタイプ、その考え方は今は変わってます。当時の僕に今の僕が会ったら、怒ります。当時の僕は、仲良しチームじゃなかった。甲子園よりもプロって目的を持ってやってたので、ダメな高校生だった。自分たち出来るんだって自信を持てるようになれば、声がでる。でも(君たちは)マジで上手いから。自信を持てるだけの練習をしてください。数じゃないよ、正しい形で練習すること。

さらに“イチ流の考え方も球児たちに聞かせた。

「勝つことも大事だけど、もっと大事なことは、その後の人生もっと長いし、この野球部で経験した自信、悔しさ、やさしさ、色んな感情があると思うけど、その後の人生の支えになるような時間にしてほしい。楽しいだけじゃない。目標に向かって頑張る。頑張るって支えになるからさ。その上で悲願を達成してほしい」

「野球に手品、マジックはない、とにかく積み重ねてモノにするしかない。仮に簡単に手に入った自信、そんなのはね、人としての厚みや重みは出ない。時間をかけて苦労して習得することが大事。そういう所を目指してほしい」

最後にはイチロー独自の考え方も口にした。

「努力したら報われるって思ってる人は見返りを求めてる。これだけやったから、必ず報われるはずだ、その見返りを求める姿勢がダメ。努力してるかどうかは第三者が決めること。自分でこんだけ努力してるって思ってるのは、たいしたことない。ここは大きなポイントです。努力はしないといけない、これは大前提。『自分は頑張ってる』という感触から抜け出さないといけない。そのきっかけにしてほしい、この2日間を。楽しみが増えた。しっかチェックするから」

イチロー氏のメッセージに対し、部員を代表して川満キャプテンが力強く答えた。

川満選手:
ありがとうございました。自分たちにとって新鮮なことが多くて、この2日間で成長できたと思います。宮古島から甲子園。楽をしないでキツイこともやって、目標を達成したいです。

その言葉を聞き終えたイチロー氏は、「期待してます」と言葉を残し、去っていった。