「想像してください。皆様の大切な方が、生きながら火にかけられ、苦しみ息絶える姿を。」

――母親が意見を述べ終えると、今度は男性社員の弟が裁判員らに一礼した後、ゆっくりと、訴えるように話し始めた。

裁判官、裁判員の皆様に伝えたいことがあります。この事件の被害者、被害者遺族はこの裁判に参加しているということです。

罪の意識はあるのに、一言も謝罪のない被告人。まるで被害者がこの法廷にいないかのように、裁判官、裁判員に身振り・手振りを使ってパフォーマンスをする弁護人。まるで私たちの心情は無関係と言わせるような審理の順番。遺族の心情を軽視するなら、裁判は機械が行えばいいと思います。

弁護人は9月25日の被告人質問の際、「鑑定医の結果をもって判断すればいい」と言いました。では、そのあとにある私たちの心情はどうなるのでしょうか。私たちは、これまでずっと黙って見守ってきました。被告人、弁護人の態度に深く傷つけられながらも、何も言わず、黙って見守ってきました。被害者をないがしろにしていいのでしょうか?私たちが黙っているからといって、何も感じてないと思わないでください。

どうか、想像してください。皆様の大切な方が、生きながら火にかけられ、苦しみ、息絶える姿を。ただ見送ることしかできなかった私たちの思いを。どうか、私たち被害者の、遺族の思いを忘れないでください。

――男性社員が涙で詰まりながら訴えるように話すと、傍聴席からも涙する声が聞こえた。