亡くなった娘が中3で書いた「未来の自分へ」
――続いて、24歳で犠牲となった女性社員の父親が、落ち着いた口調で自ら意見を述べ始めた。
奈落の底に突き落とされたような忌まわしい事件から、4年半が経ちました。片時も娘のことを考えなかったことはありません。この心境を表すのに最適な言葉は、「不条理」に尽きます。
娘が高校3年の時、「アニメーターになりたいから日芸に行きたいんだけど、普通の文系に行ったほうがいいかな」と相談してきたことがありました。私は、多くの若者が漫然と将来の希望を持たずに進路を決める中、やりたいことがあるのは素晴らしいことだと思い、「絶対に日芸に行ったほうがいいよ」とアドバイスしました。
娘の命が奪われてから、本当につらい日々を過ごしています。妻は毎月、娘の月命日になると、仏壇の前で涙に暮れています。ぽっかり空いた心の穴はいまだ埋められずにいます。娘の遺品の中に、中学3年のころに書いた「未来の自分へ」という手紙が見つかりました。それを娘の言葉として読みたいと思います。
(女性社員が中3の頃に書いた「未来の自分へ」)
「元気にしていますか。いじめられたりしていませんか。にこにこしていますか。絵は、描き続けていたら嬉しいです。自分が希望していた部活には入れましたか。高校には楽しく行っていますか。まじめに勉強していますか。」
「あまり遊びすぎず、英語の勉強頑張ってね。今を大事に生きてください。親にも、たまには優しくしてください。社会人の自分へ。もっと頑張ってね。頑張って働いて、精一杯生きてください。できれば、結婚してね。中3の時の夢は、「絵の仕事に就くこと」、「絵がもっとうまくなること」です。ちゃんと叶いましたか?」
私の手元には、持って逃げようと娘が最後まで握りしめた携帯があります。表示された時刻は、2019年7月18日午前10時34分です。それから時を刻まず、運命の時刻を今も表示しています。
事件当時、娘は3階で動画制作をしていました。突然下から煙と炎が上がってきて、煙と炎がすごくて下には逃げられず、よくわからないまま、遠のく意識の中で「なぜ今死なないといけないのか」という思いで亡くなったと思います。
被告人には極刑を望みます。36人の命を奪い、32人に重い傷害を負わせ、その家族を悲嘆の底に突き落としたことを、まるで他人事のように痛みを感じず語る被告人を、到底許すことはできません。どんな判決になっても、娘は戻ってくることはありません。しかし、正義は実現されなければなりません。それは、犯した罪に見合う判決を下すことです。