「逃げられない」指揮を執り続けた看護部長

 10月13日には北部全体が攻撃対象になるという通知があり、全員が南部に移動せざるを得ない状況になりました。川瀨さんは南部のラファに退避しましたが、アルクッズ病院には10月29日時点でも400人の入院患者と、周辺に1万4000人の避難民がいました。川瀨さんは看護部長に避難してほしいと伝えましたが、「スタッフと患者を置いて自分は逃げられない。患者さんと避難民を守る義務がある」といって指揮を執り続けたそうです。

 アルクッズ病院に運び込まれる患者は重症者ばかりで、助ける術もないような状態の人も多くいたといいます。川瀨さんの同僚医師は救急外来で対応していた時に近くで爆撃があり、その後に運ばれてきた2人の患者を診たとき、自分の子どもたちだと気づいたそうです。1人はすでに亡くなっていて、もう1人は集中治療室にいました。

 (川瀨佐知子さん)「こんなに辛いことがあるのか。それでも働き続けなければならない状況、どんどん患者さんが来るので。1人の人間として本当に厳しい状態が続いていました」
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 ついにアルクッズ病院も11月14日に南部に向けて退避が行われました。燃料が底をついていて車が出せないため、患者を抱えて歩いて退避したケースもあったそうです。